著者
アワング アズワン カリム ラフィア 三ツ井 敏明
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of applied glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.245-264, 2010-10-20
参考文献数
55
被引用文献数
1

カカオ(Theobroma cacao)は、多くの熱帯地域の国の重要な作物であり、チョコレートの原材料として栽培されている。カカオにおいても害虫耐性の付与など品種改良が望まれているが、その基礎となるカカオの生理・生化学、分子遺伝学についてはほとんどわかっていない。また、現時点ではカカオのゲノム情報も明らかにされていない。われわれは、カカオポッド果殻のプロテオームを明らかにするため2次元電気泳動(2-DE)/質量分析を行った。カカオポッドには大量のガムが含まれているため、ポッド果殻タンパク質をフェノール抽出/メタノール-酢酸アンモニア沈澱法により調製した。タンパク質試料を2-DEで分離し、コロイドCBBで染色したところ、2-DEゲル中において約700のタンパクスポットを検出することができた。244個のタンパクスポットについてトリプシン消化物のSPITC-誘導体を調製し、MALDI-TOF/TOF MSを用いたde novoシークエンシングを行った。この方法により144個のカカオポッド果殻タンパク質を同定することができた。同定されたタンパク質の大部分は代謝やエネルギー生産に関与するものであった。また、ポッドの成長・分化に関わるタンパク質も検出された。