著者
ホー ヨン キム サンフン イ スッキ キム ヒョンア
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.249-258, 2017-12-01 (Released:2017-12-16)
参考文献数
31
被引用文献数
8

多発再発性症状を伴う後天性の病態である,多種化学物質過敏症(MCS)はその多様な環境要因との関連性について研究が行われている.本研究は韓国の公共施設の勤労者と一般人の多種化学物質過敏症の自己申告有症率に関係する要因について調べた.公共施設の勤労者(530名)と一般人(500名)を対象にQuick Environmental Exposure Sensitivity Inventory(QEESI)質問票を用いてMCSの有症率とその危険度を調べた.被験者の人口統計的情報,シックビルディング症やシックハウス症ないしアレルギー(SBS/SHS/Allergy)についての被験者の理解,および家庭ないし職場での出来事についての情報も得た.QEESI質問票の評価点について公共施設の勤労者と一般人の間で,統計的有意差はなかった.MCSの全有症率は14.4%で,二群間で統計的有意差はなかった.全MCS危険度については,被験者の21.8%が “very suggestive”と分類されたが,これも二群間で統計的有意差はなかった.性別と被験者のSBS/SHS/ Allergyの認識がMCSの有症率と危険度の選別基準に影響する.韓国ではMCSの鑑別基準や処置法がないことを考慮すると,本研究結果はMCSの今後の対処法を確立するために活用できる.