著者
ケンダル ジュディ
出版者
金沢大学
雑誌
言語文化論叢 (ISSN:13427172)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.151-165, 2000-03

少なくとも私の知る限りでは「文荷」の英訳には前例がないと思われます。私たちの翻訳は以下の方法で行なわれました。日本文学研究者のイリス.エルガリシとの共同作業により,彼女が翻訳の現本となるものを作成し,私が「文荷」特有の文体に留意しながらそれに手を加えていきました。しかし,この作品特有の文体を英語で表現するのは容易ではありませんでしたが,この作品が何処かサミュエル・ベケットの文学に通ずるところがあると思い,彼の作品を改めて読み直しました。翻訳を完成するにあたり「文荷」のユーモアに富んだ複雑な文体を英語で正確に表すことができたのは,ベケットの作品に負っているところがあります。