著者
シュルンツェ・ ロルフD.
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.32-56, 1992-06-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
71
被引用文献数
1 5

本稿は旧西ドイツにおける日本企業の空間的拡散を,経済の重心の北から南への移動を背景たして説明する試みである。従来の研究は日本企業のデュッセルドルフへの集中を指摘しているが,この指摘は動態的な視点からみると現状に合わない。既に日本企業の分布は拡散段階に入ったと考えられる。 階層的拡散プロセスのイPノベーション中心はハンブルク,フランクルフト,シユツトガルトとミュンヘンであり,各中心からその周辺地域に向かう波状的拡散はそれぞれ異なった時期に生じた。商業・サービス業部門では階層的拡散が,生産部門では波状的拡散がみられ,拡散は主に南方に向かった。 上記の拡散プロセスを説明するたあに,いくっかの仮設を非線形重力型重回帰モデルを用いて検討した結果,三っの要因が拡散メカニズムの決定に関して有意性を示した。第一の要因は日本企業の情報ネットワーク(特に日本商工会議所の会員である企業),第二はデュッセルドルフからの距離,第三め要因は中心性である。 日本企業の立地行動は,一方では旧西ドイッの都市システムの変化に影響され,他方では日本企業自体の構造変化の影響を受けている。商業・サービス・生産の各部門はそれぞれ特徴的な立地パターンを示す。以上の結果より,拡散の進んだ段階においては外国企業の立地行動が都市システムの変化の簡便な指標となりうることが示唆された。