著者
ジョルジョ プレモセリ
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.19-35, 2014-03-01

本論では、泰山府君を中心に陰陽道における祭祀と祭文という視点から平安後期における陰陽道の「宗教性」に関して考察を試みる。そのため、泰山府君が『今昔物語集』の中でいかに描かれていたかに着目し、古記録から泰山府君祭の記録に焦点を当てる。さらに、陰陽道独自の世界観を描いている祭文から泰山府君はいかなる陰陽道神であったかを検討する。祭文の中では、泰山府君が「冥道諸神十二座」の「十二冥道の尊長」として新たに位置づけられるが、このような展開は、『今昔物語集』や古記録にはみえない。十二世紀初期から安倍泰親が安倍家の陰陽師としての権力を押し出して、泰山府君祭を作り上げた始祖安倍晴明のように泰山府君の利益を貴族社会に宣伝した。平安後期の祭文における陰陽道固有の世界観の中では、泰山府君は顕密体制論の中の仏教的存在には解消できない面も見えてくる。そのことによって、祭祀や祭文を中心に考える見方が陰陽道研究の新たな展望を示していくだろう。