著者
スコーフッフ ローレンス
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.122, pp.1-43, 2002-09-25 (Released:2007-10-23)
参考文献数
32

間投詞的な談話標識why(具体例:‘Why, that's a brilliant idea!’)は,現代英語では比較的まれで,古めかしさやわざとらしさを連想させる.本稿では,whyがそれに後続する文発話の意味にいかに貢献するかを考察し,文発話に先行して多く用いられる間投詞well(Schourup 2001)と同様,whyは,発話の直前に話し手が持っていた心的状態をジェスチャー的に表すものとして解釈されると主張する.whyは,発話の出だしに用いられると,聞き手に表意(explicature:関連性理論の用語で,発話により伝達される想定を意味し,論理形式を推論によって発展させたものを指す)の構築を促すことで,whyに後続する発話の解釈に貢献していると考えられる.つまり,whyは,それに後続する文発話によって表出される命題を高次の記述に埋め込むことで,表意に貢献すると結論づけられるのである.さらに,wellとwhyの機能に関しても詳細に比較検討した.両者は,本来ジェスチャー的であり,高次表意(higher-1evel explicature)に貢献し,他の様々な特徴を共有するが,この二つの標識によって表される心的状態は本質的に正反対のものである.最後に,whyと他の非命題的な表現との関係についても議論し,疑問詞whyからどのような歴史的過程を経て間投詞whyが生じたのかに対しても,説明を提案する.