- 著者
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スーザン ネイピア
- 出版者
- Japan Society for Animation Studies
- 雑誌
- アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1, pp.127-135, 2020-09-30 (Released:2021-05-07)
本稿は、高畑勲の画期的な傑作である『かぐや姫の物語』を記憶、亡命、抵抗の役割の描出における観点から考察する。主として高畑の映画に焦点をあてる一方で、現代日本文学、日本のアニメーション、ディズニー映画の近年作『アナと雪の女王』の事例を取り上げ、記憶と亡命が近年の様々な文化形態においてどのように問題化されているかを示している。本稿の主要部分では、高畑が十世紀の原作の物語—故郷から仮の亡命における月の王女の物語—のほろ苦く諦めの境地を乗り越えて、真に革新的な芸術作品を創造しているのかを示す。原作に忠実であると同時に、高畑の映画はフェミニズムや環境破壊といった現代的な関心をはっきりと包含する情熱的な抵抗の核を含んでいる。高畑は、二つのオリジナルなシーンを追加することでこれを実現している。一つは、主人公が、父親の宮殿から脱出した自分の姿を幻想的に詳細に想像するときで、あからさまなフェミニストの抵抗である。第二の例では、高畑は、別の抵抗のビジョンを挿入する。この場合は音楽や子供そして歌詞を使用し、生命のビジョンや原作の物語の末尾にある運命的な諦念に感情的に挑む変更を提供している。