著者
田中 泉 タナカ イズミ Izumi Tanaka
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.38, pp.95-104, 2008-03

雑誌『赤い鳥』に投稿された童謡作品の選定を通して、「童謡」というジャンルにおさまらない「自由詩」を見出し、学齢期の児童に向けて自由詩の創作を奨励した北原白秋は、その流れの中で幼児の詩にも注目するようになった。白秋は幼児の詩について、「童謡」と「自由詩」両方の特質があるとみなし、幼児の発話は自然と歌謡の調子を帯びるものであるととらえている。本稿では、幼児詩の具体例として白秋の長男・隆太郎の詩をとりあげ、幼児の詩にみられる歌謡性が、音声言語の発達過程にある幼児の発話にみられる「繰り返し」という特質と関連するものであることを指摘した。