著者
田中 舞 タナカ マイ Tanaka Mai
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.13, pp.133-147, 2015-03

研究ノート(Research Note)外国人留学生が日本の大学や大学院等で学ぶ場合、意見文等の論述文を作成する能力が求められることが多い。そのため、本稿では、論述文で多用される「思う」を取り上げ、Web 上で公開されているICLEAJ 作文コーパスβ版を用いて、日本語母語話者と中国人日本語学習者及び韓国人日本語学習者の使用実態の比較を行い、それぞれの言語使用の特徴を明らかにし、文章作成時に学習者に必要だと考えられる指導点を探った。分析は使用されている「思う」の活用形、直前で用いられている前接語、用法、及び「と思う」の引用部分で使用されている文末表現の4つの点から行った。その結果、日本語学習者の使用する「思う」は、全ての点において日本語母語話者と比較しバリエーションが少なく、「思う」の使用法が固定化されていることが確認された。特に、日本語学習者は日本語母語話者と比較し、客観的な表現として使用可能とされる「思っている」を過剰使用している半面、「普通形+ように思う」や「意向形/たい+と思う」、「~のだと思う」などのような書き手の意見陳述の強さを和らげる表現の使用が少なく、論述文ではこのような表現がしばしば用いられることを指導する必要があることが明らかになった。また、第三者の感情を表す「ている形」の使用法など、日本語母語話者にはあまり用いられない表現の使用を控え、他の表現を用いるべきであることも指導する必要があると思われた。