著者
ティン ティン ウィン シュイ 山元 昭二 藤谷 雄二 平野 靖史郎 藤巻 秀和
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4113, 2009 (Released:2009-07-17)

【目 的】 近年、ディーゼルエンジン由来ナノ粒子の毒性影響研究の必要性が、社会的に認知されるようになった。本研究では、ナノ粒子(粒径50 nm以下)を多く含んだディーゼル排気(NRDE)をマウスに曝露し、細菌細胞壁成分リポタイコ酸(LTA)投与との併用下で海馬における空間認識記憶学習と記憶関連遺伝子発現や嗅球での神経伝達物質レベルおよび記憶関連遺伝子発現について検討した。 【材料および方法】 動物はBALB/c 雄マウスを用い、NRDEの全身吸入曝露チャンバーで4週間(5時間/日, 5日/週)曝露した(モード粒径26.21 nm、重量濃度148.86μg/m3)。また、曝露期間中、計4回(1回/週)LTAを腹腔内に投与した。NRDE曝露後におけるマウスの空間認識記憶学習を調べるためにモリスの水迷路試験を行った。また、嗅球での細胞外アミノ酸神経伝達物質(グルタミン酸)レベル測定のために脳マイクロダイアリシス法との組み合わせでHPLC分析をおこなった。さらに、海馬および嗅球における記憶関連遺伝子のmRNA発現レベルをリアルタイムRT-PCR法によって解析した。 【結果および考察】 モリス水迷路試験において、NRDE+LTA群では、対照群(清浄空気のみ;LTA非投与)に比べて水面下に隠れたプラットフォームへの到着に長い時間を要した。NRDEのみの曝露群ではそれらに影響はみられなかった。また、海馬でのNMDA受容体サブユニットNR1, NR2A, NR2BのmRNA発現レベルは、対照群に比べてNRDE+LTA群で有意に高かった。嗅球において、NRDE曝露のみやLTAとの併用、もしくはLTA投与のみは、グルタミン酸レベルの有意な増加を引き起こした。又、NR1, NR2A, NR2BやプロテインキナーゼCaMKIV, 転写因子CREB1等のmRNA発現のアップレギュレーションがNRDE+LTA群において観察された。