著者
デッセィー ウーゴ
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.93-114, 2009-06-30

宗教はグローバル化によって、進行しつつある価値観の相対化及び技術偏重の制度に対応するよう迫られている。それは、宗教の社会倫理に影響を与えているように思われる。これら二点が宗教の社会倫理に影響を与えていると思われる。浄土真宗の社会倫理とグローバル化について、(一)政治制度及び教育制度に対する姿勢と(二)宗教的価値観の相対化及び多元主義に対する姿勢という、二つの重要な側面を分析することで、異なる立場があることが分かる。浄土真宗は多くの場合、宗教社会学者のピーター・バイヤーが仮定する、グローバル化に前向きな「リベラル・オプション」を選ぶ傾向にある。これは靖国問題、教育基本法改正に対する取り組み、多元主義の重視、自己の宗教的伝統に対する認知的アプローチにおいて明らかである。その一方で、「ヒューマニズム」批判のように、グローバル化を危険視し抵抗するために、宗教的伝統の権威を力強く回復しなくてはならないと考えている。