著者
デュンカ ノエル
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
no.129, pp.87-92, 1996-03
参考文献数
3

この研究は,フィリピンの総合社会林業計画(ISFP)における計画から実行にいたる組織の担当者の役割,農民参加の内実を明らかにすることを目的として,「プロジェクト担当者の農民参加に対する役割」に関するアンケート調査を通じて分析を行った。担当者はプロジェクトへの農民参加の促進を任されているが,コミュニティーを活性化させる組織化の技術の欠如が資源の無駄や損失につながり,農民参加プログラムにおける参加の仕組みが育つのを妨げているということが明らかにされた。一方では,担当者の多くは農民がプロジェクトの企画・運営に参加する能力があることも認めていることが分かった。また,参加型プログラムに従事している担当者は,短期間にプロジェクトの成果を生み出すことよりも,山間地コミュニティーの活性化にとって重要な参加者の組織化のプロセスの改善を図ることに力を注ぐべきである。さらに,ISFPは農民達を含む高地住民の生活を物質的に向上させるだけでなく,高地の土地管理を持続させる社会的組織を構築するという理念の下に行われなくてはならない。
著者
デュンカ ノエル
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
no.127, pp.113-118, 1995-03
被引用文献数
1

社会林業は今日の開発政策の中でもきわめて重要なものの一つであり,より実効のあるシステム化の追求は不可欠であると考えられる。そして,住民参加をそのシステムに組み込むことによって,内発力を引き出すことが,とりわけ必要な段階に至っている。また,これまでの社会林業プログラムの実施結果の分析が,今後のプロジェクトの成果につながるものと言える。本研究は,このような視点に立ち,フィリピンの事例を通じて,(1)これまでの社会林業政策が住民(農民)参加に与えている影響,(2)住民参加の機会や強制の程度ならびにその特性や自発性に関して社会林業を評価するものである。調査事例は異なる4つのプロジェクトを対象とし,主に聞き取りとアンケート調査によって行った。その結果,農民が社会林業プログラム自体を理解し,同意を示しているが,農民参加は全体的には低位な段階にある。しかし,地域によっては計画から実施段階に至るまで積極的な参加がみられるところもあるなど,その差異はかなり大きい。技術援助の効果を高め,社会林業プロジェクトを成功に導くためにも農民の内発的な参加率を高めるべく,その差異の要因分析が次の課題である。