著者
デューク ベンジャミン
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.33-41, 2002-03

合衆国憲法修正第一条には,アメリカ型民主主義の原理として,教会と公共機関の分離という意図が込められていた.ジェファーソンによって憲法に組み込まれたこの条項は,他の条項と共にホレース=マンによる公立学校でも生かされ,南北戦争の頃から各地に浸透していったが,ここで言う教会はキリスト教の一宗派のことであった.しかし,公立学校で行われていた聖書の郎読や主の祈りが,この修正第一条に抵触するという訴訟が児童の母親から出され,1963年,連邦最高裁はこれまでの認識を覆えす判決を出すことになった.この際,原告側は憲法修正第十四条をその根拠として争うことになったが,各種人権を保証したこの修正第十四条は,南北戦争後に自由の身となった黒人の基本的権利を保証するもので,本来宗教とは無関係のものであった.最高裁は原告側の訴えを認め,その後修正第一条はマン以来の公立学校の有り様を否定する法的根拠へと変容していった.