著者
内山 勝 ドシェ ピエール
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.19-30, 1989
被引用文献数
17 2

ロボットが両手でひとつの対象物を操作する作業について, 静力学および運動学的観点より理論解析し, 協調動作を記述するための作業座標, およびその座標系における一般化力, 速度, 位置を首尾一貫した形で導く.そして, この結果に基づき, 左右の手にマスタ, スレーブの区別をつけない位置と力のハイブリッド協調制御系の構成を示す.理論解析では, 両手の運動を対象物中心で考えるために, 仮想ステッキという概念を新たに導入し, さらに一般化逆行列の理論を用いることにより, 両手の運動を対象物の絶対運動と内部運動に分解する.この分解された作業空間において, 協調動作を記述するための一般化力, 速度, 位置を導く.こうして導かれた一般化力, 速度, 位置は, 左右の手の関第力, 速度, 位置の対称な関数となっている.したがって, この座標を作業座標として構成されるハイブリッド制御系は, 左右の手にマスタ, スレーブの区別をつけることなく, 対象物の絶対運動および内部運動に対応した位置と力をそれぞれ独立に制御することが可能である.これより, 両手で対象物を保持して運ぶ作業が, 非マスタスレーブ方式により実現される.