著者
永井 敦子 ナガイ アツコ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.15-22, 2017-03-31

本稿では15世紀末から1570年代までの王令における、ポリスの語の用いられ方と、意味内容の変化を検討する。15世紀末の王令では同業組合や都市の特権を認める際にポリスの語が用いられ、その意味内容は漠然とした秩序維持の場合が多い。しかしフォンタノンが収集した16世紀半ば以降の王令では、ポリスの語が、街路整備、価格規制、犯罪抑止などの具体的な内容をもった秩序維持の意味で用いられるようになる。また「ポリスの事柄」「ポリスについての王令」の範囲が限定され、都市における規則違反に関する情報の掌握と処罰といった、「ポリス役人」の職務内容が明確化する。16世紀におけるポリスは実効力を欠くが、ポリスの内容がこのように具体化したことで、王国の秩序形成手段としてのポリス(治安行政)につながるのではないだろうか。
著者
永井 敦子 ナガイ アツコ Atsuko NAGAI
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-10, 2023-03-31

本論文では16世紀の王令における文書作成に関する規定を検証する。1490年代から16世紀にかけて、王権は長大な王令を繰り返し発布し、王国の司法制度・課税制度をそこに書き表しただけでなく、高等法院その他の裁判所に、王令の文字どおりの遵守、および王令に基づいた判決を命じた。またそれらの王令においては、それぞれの裁判所の判決、公証人の証書類、貴族の名簿、そして教区簿冊といった、文書記録の作成と参照についての規定が増えていく。これを本論では行政の文書化として捉える。16世紀後半のフランスは宗教戦争期にあたるが、文書化の視点を加えることによって、当時の治安行政(ポリス)を含めた行政体制を見直すきっかけとしたい。