著者
ノイマン フロリアン
出版者
香川大学
雑誌
香川大学生涯学習教育研究センター研究報告 (ISSN:13420534)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.15-39, 2008-03

本論文は今年ミュンヘン大学に提出予定の博士論文を要約したテキストの一部である。大正・昭和初期の東京帝国大学教授・右翼思想家上杉愼吉をテーマとし、特に第一次世界大戦後の大正デモクラシーに対する上杉の反発を詳しく分析している。上杉は1919年に東京帝国大学で結成された新人会に対抗して右翼学生団体興国同士会をつくり、パリ講和会議後の国際新秩序に対して激しく批判し、『國體精華發揚』と『暴風來』を執筆した。『國體精華乃發揚』で上杉は日本国家の大改造を呼びかけ、「思想の淘汰」、「国威の宣揚」、「挙国皆兵」、「経済の統一」、「民生の修固」、「政治の刷新」を要求した。上杉は社会的に無視された運命となった。