著者
羽生 京子 仲村 洋子 ハブ キョウコ ナカムラ ヨウコ Kyoko HABU Youko NAKAMURA
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.44, pp.11-26, 2004-03-31

わが国独自の和服は、着付けることによって衣服としての機能を果たす。着装後時間を経過することによって、動きに伴い着装直後と形状の変化つまり着崩れが生じる。この着崩れについて、前報に引き続いて究明したのが本研究である。前回の実験について疑問視された、いくつかの点について解決を計るために、今回も、3タイプ、つまりS・M・Lサイズの被験者について、標準寸法と割り出し法による仕立て上がり寸法を採用した試着衣を新たに作製し、着装実験を行った。試着衣の作製条件として、視覚的判断を考慮して実験に用いる浴衣地の図柄などを同一にすること、ある程度幅のある標準寸法を一律に定めること、一定の技術で縫製し均一に仕上げることなどについて配慮した。着装実験によって、前回とほぼ同様な結果を得ることが出来た。つまり、S・Mサイズについては、標準寸法を統一したことで着装スタイルの変化はあっても、着崩れ量の変動は少ないし、割り出し法においてのスタイル・着崩れ量も同程度と判断できた。Lサイズに関しては標準寸法での不足が一層明瞭になり、割り出し法によっても許容範囲ではあるが充分ではない。ただし、それによる着崩れは同程度であることを確認した。加えて、Lサイズについて、課題を解決する手掛かりとして、幅の広い浴衣地を準備し布幅の関係で、試みてない割り出しで算出した数値によって試着衣を作製し再実験を試みた。結果、着装スタイルはほぼ満足出来る形となったが、接合線位置つまり各身幅の比率について新たな課題が残される結果となった。
著者
羽生 京子 ハブ キョウコ Kyouko Habu
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.40, pp.283-296, 2000-03

平面構成実習の細目である「女物アンサンブル」の長着と羽織の衿の適合性について究明したのが本研究である。「アンサンブル」は,共布で縫製し,長着と羽織を一緒に着用することを目的としている。当然のことながら,着用した際に長着と羽織の衿が適合することが必要条件となる。この長着の衿肩明きは直線裁ちにするのが一般的であるが,曲線に明ける方法を採用することで,羽織の衿との適合がどの様であるかを把握するために,学生の協力を得て着装実験を試みた。曲線裁ち衿肩明きによる長着を着装した時の特徴は,衿が首にまきつく形になること,背面衿つけ線がゆるやかに弧を描くことである。このため,羽織を着用した際,直線裁ちのものと比較して,やや羽織衿と離れぎみとなるが,支障のない程度であろうと,事前に予備実験で確認している。着装実験は学生自身が授業で縫製したものを,本人が着装して試みた。着装者の体格・体型は,痩身体から大柄で厚みのある体型までと様々である。実験の結果,曲線裁ちによる長着は,直線裁ちと比較して,着用する体型の違いにより着装状態が顕著に異なることを把握した。そして,羽織衿との適合が認められるのは,標準体型までとの感触を得た。そこで標準の範囲でない体型について検討をした結果,衿肩明き寸法を修正することにして,更に着装実験を進めた経緯がある。痩身体については羽織の衿肩明き寸法を狭くする方法,大柄で厚みのある体型には長着の衿肩明きを広くする方法を試みたことで,長着と羽織の衿を適合させるとの課題に関しては,おおむね目的を達したといえる。一方これまでの着装実験は,着装しやすさを追求するために肩山を肩線に合わせることを前提として試みてきたが,肩山を肩線から後方へ移動するといった着装方法を変化させることで,曲線裁ちによる明け方でもある程度有効になることも確認できた。