著者
羽生 京子 ハブ キョウコ Kyouko Habu
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.40, pp.283-296, 2000-03

平面構成実習の細目である「女物アンサンブル」の長着と羽織の衿の適合性について究明したのが本研究である。「アンサンブル」は,共布で縫製し,長着と羽織を一緒に着用することを目的としている。当然のことながら,着用した際に長着と羽織の衿が適合することが必要条件となる。この長着の衿肩明きは直線裁ちにするのが一般的であるが,曲線に明ける方法を採用することで,羽織の衿との適合がどの様であるかを把握するために,学生の協力を得て着装実験を試みた。曲線裁ち衿肩明きによる長着を着装した時の特徴は,衿が首にまきつく形になること,背面衿つけ線がゆるやかに弧を描くことである。このため,羽織を着用した際,直線裁ちのものと比較して,やや羽織衿と離れぎみとなるが,支障のない程度であろうと,事前に予備実験で確認している。着装実験は学生自身が授業で縫製したものを,本人が着装して試みた。着装者の体格・体型は,痩身体から大柄で厚みのある体型までと様々である。実験の結果,曲線裁ちによる長着は,直線裁ちと比較して,着用する体型の違いにより着装状態が顕著に異なることを把握した。そして,羽織衿との適合が認められるのは,標準体型までとの感触を得た。そこで標準の範囲でない体型について検討をした結果,衿肩明き寸法を修正することにして,更に着装実験を進めた経緯がある。痩身体については羽織の衿肩明き寸法を狭くする方法,大柄で厚みのある体型には長着の衿肩明きを広くする方法を試みたことで,長着と羽織の衿を適合させるとの課題に関しては,おおむね目的を達したといえる。一方これまでの着装実験は,着装しやすさを追求するために肩山を肩線に合わせることを前提として試みてきたが,肩山を肩線から後方へ移動するといった着装方法を変化させることで,曲線裁ちによる明け方でもある程度有効になることも確認できた。