著者
バロソ イザベル
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学総合政策研究紀要 (ISSN:13463802)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.81-95, 2010-09-30

「神話」とは何か。神話が記録される理由、即ち神話の中に隠されているイデオロギーとは何であろうか。 19世紀にはドグマとして考えられた「神話」の概念は、20世紀に入ると新しい思想のもとに改めて考えられるようになった。比較文学の中で「受容美学」が「テクストの不確定性」を指摘するなど、神話の意味も疑問視され、その「絶対的」・「客観的」な意味を失った。神話の歴史性や芸術性はともかくとして、「下部構造」、或いは「ジェンダー差」という提起が重要なものとなり、神話学研究の中心となる。 日本神話で、「アマテラス」や「イザナミ」の象徴性や役割を分析すると、月経などの「女性のもつ神秘性」の中に「性的抑圧」の意味が隠されていると考えられる。 さらに、「集団のアイデンティティを強める」神話の中に、社会に対するメッセージがどんな風に現れているのか。1950〜60年代の反精神医学からニュー・エイジに表れるアルターナティブな文化が現代の神話のように考えられる。