著者
バン・ザイル ジュディー
出版者
龍谷大学国際社会文化研究所
雑誌
龍谷大学国際社会文化研究所紀要
巻号頁・発行日
no.10, 2008-06

呼吸は上演芸能における普遍的要素であるが,この論文では呼吸をどう行うかが韓国舞踊を韓国舞踊として特徴づける重要な要因であることが主張される。ここでの著者の議論は,呼吸が字義的に,あるいは示唆的に,どのように身体的・美学的技能に表されるかを考察することで,これまでの韓国舞踊についての議論をより進展させたものである。そうすることで,呼吸が演者によりどう生理的に使用されるかと,呼吸が観客によりどう受け止められるかとの間に違いがあることを指摘し,呼吸法が韓国舞踊の訓練に際して教えられるかどうかに言及している。ここで分析に使用されているのは,ルドルフ・フォン・ラバンの考えとこの考えに基づき作られた今日ラバン記号と呼ばれている体系である。踊り手が実際にどのような呼吸法を使用するか,またこの呼吸法が踊り手のすべての動きを誘導するかどうかとは関わりなく,韓国舞踊がもつ独自の特徴は,呼吸をどう身体で体現し,どう目に見える形で表現するかであることが示される。さらに韓国舞踊の教師と踊り手とでは呼吸に関して同じ考えを持たず,またこれに関連した考えも同じようには表現しないことが指摘される。