著者
パイエ 由美子 パイエ ユミコ Payet Yumiko
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.12, pp.131-161, 2014-03

研究論文(Article)植芝盛平の創始した現代武道、合気道の思想について、その創始の時期から、合気神社建立を経て、終戦に至るまでの期間を合気道の創成期と捉え、その背景となる思想について明らかにした。創成期において、植芝が大本の出口王仁三郎に出会ってその思想を吸収し、変容させ、どのように自身の武道理念と技法を構築して合気道を創成していったのか、この時期の合気道思想とはいかなるものであったのかを検討した。植芝盛平、出口王仁三郎、そして戦前の直弟子たちの言説といったテクストを取り上げて、身体観(技法観も含む)、修行観、心法、という三つの観点に着目し、内容を抽出して、その思想とどのようにかかわっているのかを確認した。特徴的な身体観としては、(1)自らの身体は自らのものではなく、神より、または天皇より授かったものである、(2)言霊の働きは、呼吸と合わさり、一つの身体技法として組み入れられた、(3)衝突することのない力の使い方、であった。修行観では、(1)霊体一致、または神人合一のための修行、(2)修行は型の反復稽古ではなく、常に新たなる技法を生み出す、不断の進歩向上でなければならない、ということが明らかになった。さらに、心法は、(2)心が身体よりも先に動く、心の先導性、優先性、(2)「気」の捉え方は、過去の武道伝書と出口王仁三郎の思想との混在が見られ、創成期においては、気の概念はまだ変化の途上であり、確立していない。以上の点が、合気道の創成期における主な思想として明らかになった。