- 著者
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鈴木 啓一
ホーク エムディー・アズハウル
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.5, pp.512-520, 2009-05
家畜に給与する飼料は畜産の生産コストの主要な部分を占めるため、飼料の利用効率を高める方向への改良は飼料コストを低減させことにつながる。飼料要求率は、増体当たりの飼料摂取量として表され、飼料摂取量や成長率との間に有意な遺伝と表型相関が認められるためこれまで伝統的に効率に対する重要な測定形質として使用されてきた。しかし、摂取量/増体量のような比形質に対して選抜を行うと、世代が進むにつれてその成分形質の相関反応に問題が生じる可能性がある。余剰飼料摂取量は実際の飼料摂取量と維持および生産に必要とする飼料摂取量との差に由来する形質である。牛と豚に関する余剰飼料摂取量の遺伝的変異は大きく選抜反応が期待できる。表現型余剰飼料摂取量は体重や増体量と独立した形質である。遺伝的余剰飼料摂取量も、成分形質である体重と増体量とは遺伝的に独立している。余剰飼料摂取量と一日平均飼料摂取量、飼料要求率との遺伝相関は、牛と豚で高く正の値である。余剰飼料摂取量は牛ではロース芯面積や枝肉重量と、豚ではロース面積や皮下脂肪厚とそれぞれ好ましい遺伝相関を示す。余剰飼料摂取量を減らす(余分な飼料摂取量を減らす)方向への選抜は、牛と豚の飼料効率と、経済的に重要な枝肉形質の大部分を改良することができる。それ故、余剰飼料摂取量は育種計画での飼料要求率に代わる選抜基準形質として利用することができるだろう。