著者
嶺崎 寛子 ミネサキ ヒロコ Minesaki Hiroko
出版者
「宗教と社会貢献」研究会
雑誌
宗教と社会貢献 (ISSN:21856869)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.27-51, 2013-04

本稿の目的は、在日ムスリムが東日本震災時に行った支援を、巻き込むこと、エンパワーメント等の開発学のタームを援用しつつ論じ、その意義を日本社会とイスラームという二つの文脈から整理・分析することである。事例としてイスラーム系の新宗教、アフマディーヤの在日メンバーらが、NGO・ヒューマニティ・ファースト(HF)として石巻市湊小学校避難所で行った支援を扱う。被災者たちが避難所という特殊な状況下でムスリムにどのような印象を持ったかを語りから検討し、避難所における「強制」がもたらした相互影響を具体的に見る。次に慈善の構造を恩/恩返しを援用し、受援者にとっての支援の意味という視座から整理し、一神教の慈善の構造よりは、被災者を巻き込んだエンパワーメント・アプローチが、効果的な支援を生んだ要因であると結論づけた。