- 著者
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メーリニコヴァ イリーナ
- 出版者
- 日本スラヴ・東欧学会
- 雑誌
- Japanese Slavic and East European studies (ISSN:03891186)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.57-81, 2003-05-31
筆者の知る限りでは、日本をテーマとする1935-1999年に撮影されたソビエト・ロシア映画35本の中に、日本と日本人が軍事上の敵として登場するフィルムが18本ある。そのうち半分の9本は1935年から1939年までの短期間に公開されており、いわゆる『防衛映画』のジャンルに属している。『防衛映画』とは国防に必要な軍事力強化のプロパガンダが目的で作られた劇映画であった。本論文は、1930年代のソビエト『防衛映画』における日本人のイメージについて考察したはじめての読みである。最初に9本の映画のあらすじをまとめて、次にそれらの歴史や政治的背景を概観する。取り上げた作品の中にはアレクサンドル・ドブジェンコの『アエログラード』、ワシリエフ兄弟の『オロチャエフスクの日々』などの有名な作品が含まれている。敵国としての日本及び軍事的対立者としての日本人のイメージについて調べつつ、映画における空間のイメージ、そして主人公である日本人の心理描写を分析している。ソビエト映画において日本人のイメージを構成している階級(class)と民族性の相関関係を考察すると、敵対階級の代表者としての日本人の描写は、民族的人種的に異質な日本人像の描写に比べてより重要な役割を果たしていると結論できる。ソビエト映画の描写において、日本人のイメージが「人民の敵」-スターリン政権にとってあらゆる仮想敵の象徴であった-のイメージと重なっていることを論じている。