著者
盛田 友弌 モリタ トモカズ MORITA Tomokazu
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of Fisheries Kagoshima University (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.121-129, 1960-02-20

In the Tokara Sea, the skipjack fishing water-temperature is about 20°~30°C throughout a year.And during the term when the water-temperature shows comparativelyhigh and low degrees within the limits of 20°~30°C no temperature variation is to beabserved through the sea conditions, with good catches of the skipjack. At the termwhen the sudden ascent and descent of water-temperature occurrs in the fishing groundsome remarkable time variation in the sea condition becomes to be noted, with poorskipjack catches. As to the horizontal distribution of water-temperature, when the fishingground shows a higher and more constant temperature than the other ones, the goodskipjack catching is to be expected on the ground.From the above mentioned results it is assumed that the catching condition overthe Tokara Sea may be expected to be good, provided that the water-temperatureestimated both from the terminal and spatial view points is kept comparatively constant,and moreover that it is confronted by the opposite inconstancy.トカラ海域におけるカツオの漁獲水温(表面)はほぼ20°~30°C位の範囲であるが,その最高,最低を示す時季においてカツオ漁が好況を呈しており,その水温の顕著な昇降過程にある時季には概して漁況不振となっている。なお,カツオの漁場附近における水温の鉛直分布の年間変動をみると,その恒温季には比較的深層まで等水温状態となり,その状態が持続されている。かかる海況においてカツオ漁の好況が期待されている。しかし,春の昇温季の後半には表面水温の急昇により表層における成層状態が極めて顕著となり,カツオの沈降が想像され,このためその漁況は総体的に不振となる。又,秋の降温季は比較的深層までの総体的な降温が時間的に顕著になるので,カツオ群は適温水帯を求めて南下移行するようになる。故に,この降温現象の遅速による等水温帯の時間的出現状況が秋季のカツオ漁況とその漁期の長短に相当影響しているものと考えられるのである。しかして,トカラ海域では水温の水平的な分布状況においてもカツオ群は概して等温な水帯を撰択し,その漁場を構成している。ただ,この場合水温による比較的顕著な潮境で包囲される非開放的な等水温帯がカツオの好漁場の構成要件となっているものと考える。トカラ海域におけるカツオの漁獲水温を温度別,期別にみると,春季にはその水温範囲が概して大きくなっているが,これは漁場水温の上昇に伴い高温水帯から移行した魚群と残存低温水帯における残留魚群との混獲によって記録されるようになったものと考える。又,同海域におけるカツオの等漁獲水温期間は夏冬の恒温季には当然比較的長期にわたるが,春秋の昇降温季においても魚群の往来が想定されている沖繩海域を通じてみると,相当長期に及んでいるのである。以上更に要約すれば,トカラ海域におけるカツオ漁況は,その漁場が時間的に空間的に比較的等温な状態を示し,しかも,それが常に顕著な相対的状態にある場合においてその好漁が期待されるものと考察される。