著者
リュツェラー R
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.46-62, 1995-06-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

一般に日本の社会経済地理的特徴は大都市圏の過密と農村地域の過疎との対照にあるといわれている。しかし本研究では,少なくともいくつかの最も重要な社会問題については,その実態がはるかに複雑であることを明らかにしようと試みた。 相関分折と多重分類分折の結果,失業率,女性の離婚率,母子世帯数,生活保護受給者数といった社会指標の分布に対しては,地域別の職業構造が最も強く影響していることが明らかとなった。この点では,専門的・管理的職業の割合の低い大阪や福岡のような都市地域や,製造業部門の雇用が相対的に不足する農村地域(主に西南日本)は「問題地域」であるということができる。他方,都市対農村の対照による影響は小さく,物価調整後の平均雇用者所得や年齢調整後の学歴別構成などの分布に影響しているにとどまる。さらに,被差別部落民や高齢単身世帯の割合に関しては,その分布は歴史的・文化的背景に関連している。