著者
七川 正一 森 將晏 掛橋 千賀子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.5_27-5_34, 2002-12-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
17

マウスの大腿後部を50mmHg または200mmHg で2時間圧迫し,組織傷害の圧力による差について検討した。 50mmHg で圧迫した場合,皮膚は著変が見られなかったが,圧迫直後から3時間後にかけて皮下浮腫が増強し,好中球の血管内集簇や血管外への遊走も観察された。 浅層の筋肉には壊死や炎症細胞浸潤が見られたが,深層の筋肉には著変が見られなかった。 24時間後には浮腫は治まり,炎症細胞浸潤も軽減していた。 200mmHg で加圧した場合には肉眼的に腫脹が観察され,組織学的に高度の皮下浮腫と好中球浸潤が見られるとともに,深層の筋肉にも強い炎症と壊死が見られた。 また,出血や血管内へのフィブリンの析出も観察された。 24時間以降においては出血の増強とともに皮下脂肪細胞の壊死も観察された。 このことから,肉眼的には傷害が認識されない場合でも深部には傷害が起こっている可能性があり,傷害は圧力が強い場合には強さと深さが増すだけでなく,質的変化も加わることが明らかにされた。 また,圧迫解放後傷害が強くなるのは虚血再灌流傷害が関与していると考えられ,圧迫後早期に適切な処置をする事により傷害を軽減出来ると考えられた。