- 著者
-
深井 喜代子
大名門 裕子
- 出版者
- 一般社団法人 日本看護研究学会
- 雑誌
- 日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.3, pp.3_39-3_46, 1992-07-01 (Released:2016-03-31)
- 参考文献数
- 26
88名の健康な学生(男27名,女61名,18-37才)を被験者として,注射針刺入部としてよく選択されている三角筋,前肘,手背各部の皮膚痛覚閾値を,タングステン製(直径140μm)の刺激毛を用いて痛点分布密度を測定する方法で調べた。その結果,三つの皮膚領域とも,痛点分布密度(prick painとdull painの総数)は男性より女性の方が有意に大きかった(平均痛点数:男,7.6-11.0/4mm2,女,10.2-12.2/4mm2)。部位別では,手背部(男,7.6±4.7/4mm2,女,10.2±4.2/4mm2),三角筋部(男,9.1±5.0/4mm2,女,10.7±4.4/4mm2),前肘部(男,11.0±4.1/4mm2,女,12.1±3.3/4mm2)の順で痛点分布密度が小さかった。この傾向は注射針刺入時の鋭い痛みに相当するprick painのみの分布に着目しても同様であった。このような痛覚閾値の部位差,性差について考察した。本実験の結果から,看護者は,健康な青年層では,女性は男性より痛覚閾値が低いこと,そして手背部の閾値は比較的高いことを考察して注射や採血を行うべきであると結論した。