著者
山越 統雄 三上 康彦 田幡 義郎
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.531-534, 1968

新生児の細菌性髄膜炎は, 近年その報告が多く, その起炎菌は生後日数の短いものにおいてはグラム陰性菌, 特に大腸菌が主とされている. 児の細菌感染の多くは分娩中, 就中早期破水後の羊水感染によるものであり, 臨床症状は初期には定型的なものを欠き, 診断には髄液検査が不可欠とされ, 屡々剖検によつて確診が得られるものが多い. 我々は分娩経過中に大腸菌性膀胱炎をきたし, 早期破水, 微弱陣痛で分娩遷延し, 羊水感染を疑わしめた母親から出生した成熟児で, 診断の確定せぬまま生後43時間で死亡し, 剖検によりEscherichia coiiを起炎菌とする新生児髄膜炎と判明した1例を経験し, 我々が行なつた満期産60例の羊水中及び破水後の腟内容と新生児口腔内吸引物中の細菌検索の成績においても. 菌の種類はE. ColiがStaphylococcus epiderimidisに次いで多く, 大腸菌性の新生児感染症に留意しなければならない結果を得ており, 同時に髄液検査の重要性を示唆されたので考察を加え報告した.