著者
三井 さや花
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.154, pp.115-122, 2013 (Released:2017-02-17)
参考文献数
6

日本語には,名詞の単数形と複数形に文法上の対立がないため,英語母語話者が日本語を産出する際,名詞の単・複対立の誤用が起こることは少ないと考えられている。つまり,日本語母語話者が英語を産出する際に文法範疇としての「数number」についてかなり意識をしているのに対し,英語母語話者が日本語を産出する際は文法的現象としての「数」概念については考慮する必要がないとされている。しかし,実際には指示語による複数提示において,複数接辞や数量表現を伴わない単数での指示表現を使ってしまうこと,また類例として挙げた先行詞を指示詞単数形で示してしまうことにより,誤用が生じていることがわかった。英語母語話者が複数指示を明確にしたい場合には,複数を表す接尾辞か数量表現,または指示詞複数形等で明示する必要がある。