著者
三宅 邦夫 久保田 健夫
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.21-25, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
34

遺伝的・環境的要因による調節機構の破綻が神経発達障害の発症や病態に関与していることが知られている。エピジェネティックな遺伝子発現機構の中心分子をコードする MECP2 はレット症候群の原因遺伝子であるだけでなく,自閉症や成人精神疾患にもかかわることがわかってきた。また,これらの病態に神経細胞とともにグリア細胞も関与していることが判明し,これらの患者から作製された iPS 細胞を用いた治療薬開発研究も盛んになりつつある。さらに妊娠中の喫煙や飲酒,残留性有機汚染物質の曝露によって生じた胎児の DNA メチル化異常が,自閉症や注意欠陥 / 多動性障害などの発達障害の発症要因となりえることも明らかにされつつある。このようなエピジェネティックな変化には可逆性があることから,これを修復する薬物よる治療法の確立が期待されている。