著者
大嶋 弘子 内藤 俊夫 久木野 純子 福田 友紀子 坂本 直治 三橋 和則 武田 直人 奥村 徹 礒沼 弘 渡邉 一功 林田 康男
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.167-173, 2005-06-30
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的:特定の診療科を決めかねる病態として不明熱がある.順天堂大学医学部附属順天堂医院総合診療科を初診し入院を要した不明熱患者215症例について,今後の診断の参考とするためその特徴を解析し検討した.対象および方法:1994年10月から2004年8月までに当科を初診し,入院治療が必要となった成人の原因不明の発熱患者215名について検討した.対象患者の発熱の原因を疾患別に分類し検討した.また,65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者での原因疾患について比較を行った.結果:原因疾患として,感染症が102名(47.4%),非感染性炎症性疾患が40名(18.6%),悪性疾患が14名(6.5%),その他の疾患が21名(9.8%),原因不明が38名(17.7%)であった.頻度の高かった伝染性単核球症・髄膜炎・深部膿瘍・感染性心内膜炎の中で,初診時の平均年齢は深部膿瘍で有意に高く,平均体温は伝染性単核症で有意に低かった.65歳以上の高齢者では65歳未満の患者に比較し,感染症を原因とする不明熱の割合が低く,原因不明の症例が多かった.85歳以上の超高齢者も7名含まれた.考察:不明熱の原因の約半数は感染症であった.特に,伝染性単核球症・感染性心内膜炎・深部膿瘍・髄膜炎の頻度が高く注意が必要である.HIV関連不明熱・麻疹・風疹の患者も比較的多く認められた.悪性腫瘍は多岐に渡ったが,画像検査の普及や進歩のため不明熱の原因となることは少なくなっており,過去の報告に比べ割合が低下していた.7症例は診断確定までに60日以上を要しており,周期的な発熱のみを症状とし,診断の手掛かりが得られ難かった症例であった.この中で死亡後に病理解剖により原疾患が判明した患者が2名おり,共に悪性リンパ腫と診断された.不明熱患者の診断には,感染症を中心とした多疾患にわたる知識が必要であると考えられた.