著者
三沢 建一
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.287-292, 2006-12-21

本稿は保育教材として欠かせない油粘土の制作において、学生の表現力向上を図る目的で取り組んだ授業の実践事例報告である。かつて、生来、目の不自由な児童による粘土作品の展覧会を見た折、技術的には稚拙でも、躍動感溢れた表現に接し胸を打たれた覚えがある。視覚的整合性、合理性というものが表現を狭めていることは無いであろうか。そうした問題意識から、あるクラスの授業の中で、対象物を観察しながらの再現を目的とした表現と、それに引き続いて、アイマスクにより視覚を閉ざした上での表現とを取り上げ、2つの表現の違いを検討した。その結果、アイマスクを着けての制作では、不自由感と視覚的記憶とに支配されたものと思われるが、表現が浅く、のっぺりしてしまう傾向を示した。そこで、別のクラスでは当初からアイマスクを着けさせ、その上で、対象物が何であるかを知らせないままに、手探りのみでの表現を試みたところ、不安、不自由を感じながらも大胆で表情に富んだ表現が見られた。自分の作りつつある作品の出来具合を視覚で確認することができない状態では、触覚的イメージが強調されたと考えられ、今後の粘土制作に一つの方向性を示唆するものとなった。