著者
斉藤 裕美
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.277-281, 2006-12

糖尿病の食事療法においては、摂取エネルギーのコントロールが重要である。そこで厚生労働省許可特別用途食品の病者用食品である低カロリー甘味料「パルスイート・カロリーゼロ」を砂糖の代替品として使用し40kcal以下の低カロリーのデザートを2種類考案した。それを開業医で行われた糖尿病教室において実際に患者に提供するとともに間食の摂り方の工夫について講義した。参加した患者にアンケート調査の結果では、約9割が「とても美味しかった」、また全員が「とても勉強になった」「参考になった」と回答した。患者が上手に糖尿病と付き合っていけるよう、制限だけの食事療法ではなく摂取エネルギー範囲内で可能な限り工夫し、食べる楽しみを持ち続けられるような食事療法を提案していきたい。
著者
三沢 建一
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.287-292, 2006-12-21

本稿は保育教材として欠かせない油粘土の制作において、学生の表現力向上を図る目的で取り組んだ授業の実践事例報告である。かつて、生来、目の不自由な児童による粘土作品の展覧会を見た折、技術的には稚拙でも、躍動感溢れた表現に接し胸を打たれた覚えがある。視覚的整合性、合理性というものが表現を狭めていることは無いであろうか。そうした問題意識から、あるクラスの授業の中で、対象物を観察しながらの再現を目的とした表現と、それに引き続いて、アイマスクにより視覚を閉ざした上での表現とを取り上げ、2つの表現の違いを検討した。その結果、アイマスクを着けての制作では、不自由感と視覚的記憶とに支配されたものと思われるが、表現が浅く、のっぺりしてしまう傾向を示した。そこで、別のクラスでは当初からアイマスクを着けさせ、その上で、対象物が何であるかを知らせないままに、手探りのみでの表現を試みたところ、不安、不自由を感じながらも大胆で表情に富んだ表現が見られた。自分の作りつつある作品の出来具合を視覚で確認することができない状態では、触覚的イメージが強調されたと考えられ、今後の粘土制作に一つの方向性を示唆するものとなった。
著者
尾上 恵子
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.15-22, 2007-12

現代社会は情報社会といわれているが、パソコン、携帯電話の普及に伴い、人間関係の構築方法、対人関係様式などが大きく変化していると考えられる。本研究では、女子大学生の日常生活における情報伝達ツールの使用と友人関係、自己隠蔽の程度について110名を対象に質問紙法で検討した。その結果、多くの女子学生がメールやSNSを積極的に利用し、新たな出会いにも繋げていることが分かった。これはCMCが対人関係を広げる役割を持っていることを示唆している。また、学校生活における友人関係よりも、学校以外の友人関係の方が人数も多く、友人に対する信頼度も高かった。一方で、自己隠蔽傾向の高い人ほどSNS利用時間が長くなり、自己開示に関するリスクを感じる人ほど友人と一緒に過ごす時間を大切だと感じない傾向があった。
著者
加藤 渡 堀 義幸
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.59-66, 2005-12

今日の幼児教育には、「生きる力の基礎」を育成することが求められている。生きる力とは、基本的生活習慣、人への愛情、自然の感受性、豊かな創造性などである。これらの大部分は、野外教育に期待される成果と重なるものである。本稿では、保育者を目指す学生を対象に行った野外活動実習の内容と実習に参加した学生の反応を考察し、保育者を目指す学生への野外教育のあり方を検討した。野外活動実習に参加した学生は、実習でのプログラムから、野外活動を通して得られる教育的価値を見出すことが示唆された。
著者
野田 裕子
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.11-17, 2005-12-21

血栓症の予防に期待できる線溶酵素と抗トロンビン活性物質について、世界の発酵食品のなかでも身近に食されているものを取り上げ、その存在の有無を検討した。日本の発酵食品ではうるか(渋うるか)やこのわた、酒盗、各種納豆、もろみ、麦味噌に顕著な線溶活性がみられた。さらに奈良漬や飛騨こうじ味噌、三年味噌における線溶活性も高かった。また抗トロンビン活性は三州八丁粒味噌と麦味噌が高かった。アジアの発酵食品では特にコチュジャン、甜面醤、プアール茶で抗トロンビン活性が顕著にみられた。しかしヨーロッパの発酵食品ではゴルゴンゾーラの線溶活性とパルミジャーノレジャーノの抗トロンビン活性がみられたのみで、特に各種ヨーグルトでは線溶活性も抗トロンピン活性も全くみられなかった。
著者
本多 恭子
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.107-112, 2006-12-21

新しい食生活指針では食文化や地域の産物を生かした食生活の実践が提唱されている。本研究では日本人の持つ代表的な食文化の1つである抹茶に注目し、その資料を収集するために、お茶文化の原点である京都宇治市を中心に実地調査をおこなった。その結果、お茶は1191年、栄西によって伝えられ、その後、明恵上人によって京都栂尾に茶園が誕生、さらに、その製法が宇治に伝えられ、お茶栽培が始まったと伝えられている。そして、室町時代に入り、宇治に御用茶園が設けられたことにより、宇治は天下無双の抹茶の生産地となり、以後、茶業界は当時の覇権者達によってさまざまな変容を強いられながらも「天下の茶」を不動のものとした。しかし、明治維新以降、近世幕藩体制の崩壊によって、宇治茶業界の基本組織が解体され、生産量も激変した。現在、宇治市内の茶園は100ヘクタールを下回る状況であり、当時の御用茶園もわずか1茶園のみである。しかし、宇治橋周辺にはお茶さんが立ち並び、中には、頑なに宇治茶にこだわり、伝統を守りぬいている商人もいる。今後も「天下の茶」は商人達によって守り抜かれ、その味わいや歴史、伝統が受け継がれていくものと推察された。
著者
相墨 一彦
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.221-224, 2006-12-21

現在スイーツと呼ばれる洋菓子が一般的な若年層に受け入れられている。そしてファミリーレストランやコンビニエンスストアーのデザートコーナーに並べられているスイーツは、以前とは比べ物にならないほど品揃えが豊富である。けれどもそれらは香りも少なく、食感もただ軟らかく、甘さも薄く控えめなものばかりである。この傾向は、コンビニエンスストアーのデザートだけでなく洋菓子全般にも言えるのではないだろうか。そしてその様な菓子をおいしいと感じ、好んで食べて育ってきた今の学生にとって、全く逆のものであると言っても過言ではない本場フランスの洋菓子を学んだところで、素直に受け入れられるであろうか。製菓クリエートコースに入学し、様々な菓子作りを学んできたところで、また入学以前に比べて洋菓子専門店のケーキを食べる機会がより多くなった今、各人の好みがどの様に変化してきたかを調査してみた。その結果、焼成した小麦粉の味、バターの風味、生地の食感等、僅かながら素材本来の味覚に対して興味を示すような嗜好の変化がみられた。そこで本論においては製菓実習の授業を通して、学生が将来に向けて自分の味感覚をどのように鍛え、如何に確立していくか明らかにしていきたい。
著者
佐々木 政司
出版者
一宮女子短期大学
雑誌
一宮女子短期大学紀要 (ISSN:1349936X)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.55-62, 2006-12-21
被引用文献数
1

個人の組織社会化過程において、組織参入前に抱いていた期待と組織の現実の間のギャップから幻滅を感じ、離転職行動に繋がることが多いが、この問題に対し、心理的リアクタンス理論と現実的職務予告の観点からアプローチし、新たにリアクタンスモデルを提出し、その妥当性について検討した。その結果、現実的職務予告による参入前の期待の低減効果が確認されなかったが、幻滅を感じたときに喚起された心理的リアクタンスが離転職傾向を高めることや、上司との垂直的な交換関係の構築によって職務満足度が高まることによりその傾向を緩化することができることが見出され、当該モデルの妥当性が確かめられた。また、リアクタンスによって賃金などの周辺的な要因に対する期待が高まり、離転職傾向を高めることも確認された。現実的職務予告については従来からの期待を低減し幻滅を感じさせないようにするのではなく、幻滅を感じたときにそのショックを緩和するように機能する可能性が示唆された。