著者
三浦英樹
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
平成25年度北海道大学低温科学研究所共同利用研究集会『氷河変動の地域性に関する地理的検討』報告書
巻号頁・発行日
pp.38-44, 2014-05

現存する氷床である南極氷床とグリーンランド氷床が変動した場合、海面変化や海洋熱塩循環など地球環境に重大な影響を与えることが予想される。将来の南極氷床とグリーンランド氷床が、どのような条件でどのように融解し、それが地球環境や人類社会にどのような影響を与えるのかを検討するうえで、過去の2つの時代の氷床状態の復元は重要な基礎的情報を与える。ひとつは温暖化時代のアナロジーとなる「最終間氷期」、もうひとつが「最終氷期最盛期以降」である。本報告では、まず、現在の南極氷床とグリーンランド氷床が形成される気候条件と氷床の概況を示した上で、(1) 人工衛星測地データに基づく、地球温暖化時代である現在の極地の氷床変動の実態とその海面変化寄与量の定量的評価に関する最近の研究成果と問題点の紹介、(2) 野外地形地質調査に基づく、最終氷期最盛期の極地の氷床の拡大範囲と形状およびそれ以降の縮小過程の研究の概要と問題点の紹介、を行う。そのうえで、過去の氷床変動の研究が、どのように現在の氷床変動評価や将来の氷床変動と海面変化の予測に貢献するのかについて、その概略を説明する。