著者
菊川 裕幸 三輪 邦興 八尾 正幸
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-8, 2022-09-22 (Released:2022-09-22)
参考文献数
26

本研究では精油の抽出にあたり,簡易な方法で製作,使用できる水蒸気蒸留装置を試作し,その性能を評価した。また,試作機を用いて,兵庫県丹波市の里山の樹木から分析事例の少ないヒメクロモジ(Lindera lancea),アブラチャン(Lindera praecox),コクサギ(Orixa japonica)の3種を選定し,精油の抽出および成分分析(GC–MS分析)を行った。結果,水蒸気蒸留装置は,市販品よりも安価(製作費約6万円)かつ短時間(約3時間)で製作された。装置の重量は約13.5 kgで,植物材料は1.5 kg,水は1.5 Lまでの蒸留が可能で,屋内外でも使用できる持ち運び可能な装置である。得られた3種類の精油の含有成分は,ヒメクロモジ35種類,アブラチャン40種類,コクサギ39種類であった。精油の主成分は,ヒメクロモジではリナロール(41.26%),アブラチャンではカンファー(22.60%),コクサギではα-ピネン(23.81%)であった。近年の分析結果が少ないその成分が本研究で明らかになった。これらのことから,教育現場や里山などさまざまな場所で地域資源を利用した和精油による嗅覚教育の可能性が高まった。