著者
松田 純一 上仲 一義 野崎 周英
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
熊本保健科学大学研究誌 = Journal of Kumamoto Health Science University (ISSN:24335002)
巻号頁・発行日
no.15, pp.19-26, 2018-03

アルツハイマー病克服のアプローチの一つとして,アミロイドβをターゲットとしたワクチン開発が進められている。過去,全長のアミロイドβペプチドにサポニンをアジュバントとして加えたワクチンの臨床試験が行われたが,細胞性免疫によると考えられる髄膜脳炎が出現し,中止となった。その原因は全長のアミロイドβペプチド内のT細胞エピトープ,アジュバントにあったと考えられている。従って有効で安全なアミロイドβペプチドアジュバントの組み合わせの開発が望まれている。これまでに我々は細胞性免疫を誘導する可能性がある配列を除いた改変アミロイドβペプチドにシステインを付加することで高い抗体産生能を示すことを見出し報告した。今回,脂質異常治療薬のシステイン付加アミロイドβペプチドワクチンに対するアジュバント効果を検討した。脂質異常治療薬はスタチン類,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤,フィブラート類およびビグアナイド系薬剤を用いた。その結果,いずれにおいてもシステイン付加アミロイドβペプチドワクチンに対するアジュバント効果が認められ,特にロバスタチン,イコサベント酸エチル,ベザフィブラートはAlum アジュバントと比較しても高いアジュバント効果を示した。以上の結果から,脂質異常治療薬は高い抗体産生誘導能を示すことが判った。アルツハイマー病ワクチン開発において脂質異常治療薬は有望なアジュバント候補の一つになり得ると考えられる。