- 著者
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上原 啓吾
- 出版者
- 金沢医科大学
- 雑誌
- 金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.3, pp.161-167, 2005-10
【目的】門脈内に分泌されたGLP-1が肝門脈域における迷走神経感受機構を介してインスリン分泌を促進するか否かを明らかにするために,ラットで生理学的量のGLP-1及びグルコースの門脈内注入による血中のインスリン濃度を選択的肝迷走神経切断および非切断の条件下で測定した。【方法】Wistar系雄性ラットを用い,1)摂食時の動脈血GLP-1濃度を測定,2)摂食後のGLP-1血中濃度に相当する注入量を決定,3)選択的肝迷走神経切断あるいは非切断を行い無麻酔無拘束下に門脈内にグルコース10mg/kg/minを10分間投与,続いてグルコースに加えGLP-1 1.0pmol/kg/minまたはvehicleを10分間並行投与しインスリン濃度を測定した。【成績】摂食15分後の血中GLP-1濃度の上昇は8.6±2.4pmol/lであり,GLP-1 1.0pmol/kg/min門脈内注入はこの変動に相当する上昇をもたらした。グルコース注入中,グルコース濃度はGLP-1注入の有無,迷走神経切断の有無で差を認めなかった。非切断ラットではGLP-1注入3分後からインスリン濃度は有意に増加,GLP-1注入10分間のarea under the curve (AUC)はvehicle注入の約5.4倍であったが,選択的迷走神経切断によりAUCは40%に減少した。【結論】生理学的量のGLP-1門脈内投与は血糖上昇に対するインスリン分泌を増大させたが,選択的肝迷走神経切断によってこの作用は大きく減弱した。摂食時GLP-1の示すインスリン分泌促進に迷走神経機構が関わることが示唆された。