著者
上宇都 ゆりほ
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.46-55, 1999-03-10

『拾玉集』に収載される建久二年閏十二月二十八日の慈円・良経贈答歌は後白河院崩御直前に交わされた。和歌の明るさは院と疎遠であった九条家の展望に加えて、病悩に伏していた任子が内裏に還啓するという慶事による。慈円はこの頃院御悩の修法を行っているが、慈円の両義的立場は暗喩という表現法をもたらし、和歌の解析を困難とする。その晦渋さは遊戯性によるものではなく、「達磨」も「新風和歌」を示す歌語ではないと考える。