著者
鹿子木 聡 德田 明彦 上室 剛
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.120, pp.37-45, 2015-12-31 (Released:2018-01-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

著者らは松元機工株式会社と共同で,10a当たり200Lの農薬散布が必要とされてきた茶病害虫防除をより少ない散布量で行うことができる装置「かごしま式防除装置MCS-KAGO1-1 (以下,本装置) 」を平成25年度に開発し,平成26年度に初年度実証試験を行った。本装置によって農薬散布量を慣行よりも削減したかごしま式・40L区とかごしま式・68L区を慣行乗用・200L区 (200L/10a) と比較したところ,チャノナガサビダニ (甚発生) およびチャノミドリヒメヨコバイ (甚~多発生) に対する防除効果はほぼ同等となった。輪斑病 (中発生) に対する現地での防除率はかごしま式・72L区で87.8%,慣行乗用・200L区は82.3%となり,また,炭そ病 (少発生) の防除率はかごしま式・43L区およびかごしま式・62L区,慣行乗用・200L区が同等だった。しかし,炭そ病の多発生下では,農薬散布量が少なくなるほど防除効果が下がる傾向があった。本装置による少量農薬散布技術には不明な点が多く残されているが,実用化の可能性があると思われた。今後は実証試験を重ねるとともに,全国各地の茶園に対応できるように本装置の改良も進めたい。