著者
上平 晶一 吉田 行雄 佐藤 佳弘 平川 隆一 山中 桓夫 井廻 道夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.62-64, 1999-08-15 (Released:2014-10-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

症例は49歳,女性。23年前からの嚥下困難が増悪したため,近医を受診した。上部内視鏡検査が施行されたが,食道入口部直下の膜様狭窄のため挿入できず,当センターを紹介受診した。血液検査にて鉄欠乏性貧血が,食道造影にて食道webが認められたため,Plummer-Vinson症候群(PVS)と診断された。鉄剤の内服治療が開始されるとともに,食道webに対して内視鏡的バルーン拡張術が施行された。1ヵ月後の上部内視鏡検査で食道狭窄は改善しており,嚥下困難も軽快していた。PVSは鉄欠乏性貧血に嚥下困難,舌炎,匙状爪などを呈する症候群で,高率に食道webを合併する。治療は鉄補充が基本であるが,食道webによる狭窄が高度な場合は,診断後,すみやかに拡張術が施行されることが多い。また,食道癌,後咽頭癌の合併頻度が高く,継続的な上部内視鏡検査が必要とされている。