著者
中田 晴夏 磯野 忠大 芦沢 直樹 植田 猛 木村 貴彦 上村 和康
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.1124-1128, 2014 (Released:2014-11-01)
参考文献数
34

症例は70歳,男性.胃癌(T1b(SM),N0,M0,H0,P0,cStage IA)に対し,腹腔鏡下胃全摘術を施行した.既往に慢性蕁麻疹,バリウムとニフレックによるアナフィラキシーがあった.術前の血清ラテックス抗原特異的IgE抗体は陰性だった.術中,標本摘出と再建のため小開腹を行うと,血圧の急激な低下と顔面紅潮を認めた.ラテックスによるアナフィラキシーショックを疑い,直ちに抗ショック療法と手袋の変更を行い患者の状態は改善した.手術は無事終了し,術後経過は良好だった.術後血清ラテックス抗原特異的IgE抗体は陽性となった.本病態の発症を未然に予想することは非常に困難であり,発症した際には本疾患を鑑別に挙げ,適切な対応をすることで,生命にかかわる事態は避けられると考えられた.