著者
高橋 真治 呉屋 朝幸
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.2081-2086, 2015 (Released:2016-02-29)

シートベルト症候群は,交通事故の際にシートベルトによって腹部が強く圧迫されることにより発症し,腰椎骨折と小腸損傷などの腹腔内臓器損傷が同時に引き起こされることがある.外傷性小腸穿孔は診断が難しく開腹を決定するのに時間が掛かることがあるが,腰椎骨折を合併している場合は高率に腹腔内臓器損傷が合併することが知られている.そのため,腹部所見や画像検査所見で開腹が必要な所見が得られなくても,腰椎骨折を認めた場合は積極的に腹腔内臓器損傷を疑い,開腹のタイミングを逃さないことが重要である.
著者
渡瀬 誠 柳 英雄 廣岡 紀文 森 琢児 小川 稔 丹羽 英記
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.3375-3379, 2009 (Released:2010-04-05)

今回,肛門性癖者の経肛門的異物挿入によりS状結腸穿孔をきたした症例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.過去に,直腸異物に対し経肛門的摘出術1度,開腹摘出術2度を受けた既往がある.今回,経肛門的にボールなどを挿入し自力にて排出困難となり他院を受診したが,経肛門的に摘出困難なため当院を紹介された.主訴は,腹部膨満感であり,腹痛は認めなかった.腹部単純X線にて遊離ガスを認めたため緊急手術を施行した.S状結腸内に直径10cmと20cmの異物2個が嵌屯し,直径4cmの穿孔部を認めたが,穿孔部は内腔側より直径10cmのビニールボールにて被覆されていたため,便の流出は認められなかった.穿孔部を開大し異物を除去した後,穿孔部を縫合閉鎖した.術後経過は順調で8日目に退院した.
著者
小澤 悟 堀田 司 岩橋 誠 東口 崇 山上 裕機
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.3126-3129, 2007-12-25 (Released:2008-08-08)
被引用数
1 or 0

症例は61歳, 女性. 下腹部痛, 発熱を主訴に当院を受診した. S状結腸憩室炎による腹腔内膿瘍の診断のもとに緊急開腹術を施行した. 手術開始15分後より, 突然血圧およびSO2が低下し, 全身に発赤を認めた. アナフィラキシーショックと診断し, 加療により1時間程度で全身状態は回復した. 術中使用した麻酔薬や抗生物質の薬剤アレルギーを疑い検査を施行したがいずれも陰性であった. 問診より患者は天然ゴム手袋による痒みを自覚したことがあった. また, ラテックスに対する特異抗体価が0.56UA/mlと上昇しており, 結果として術者手袋に含まれるラテックスが原因のアナフィラキシーショックであることが示唆された. 天然ゴム製品を排除して根治術を行ったところ, アナフィラキシーショックは起こらなかった. 詳細な問診によりラテックスアレルギーの既往やハイリスク患者を割り出し, ラテックス除去環境での手術を行う必要があると考えた.
著者
朝子 理 前田 武昌
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1828-1832, 2008 (Released:2009-01-06)
被引用数
1 or 0

われわれは日常臨床でよく経験する皮下腫瘤がマンソン孤虫症であった2例を経験したので報告する.症例1は78歳,女性.乳癌として紹介されてきたが,手術の結果,乳癌でなく乳房の皮下腫瘤の原因がマンソン孤虫症によるものであった.この症例は下肢にも皮下腫瘤を認め,そこからもマンソン孤虫症のプレロセルコイドを認めた.症例2は77歳,男性.鼠径部の脂肪腫と診断したが,腫瘤内にマンソン孤虫症のプレロセルコイドを認めた.症例1,2ともに,マムシ,生の鶏肉,スッポンの生血,タニシ,淡水魚の摂取既往歴をもっていた.われわれ外科医は,皮下腫瘤の中にマンソン孤虫症のような寄生虫疾患もごく稀にはあり得ることを考慮するべきである.
著者
黄 泰平 藤川 正博 安政 啓吾 田中 恒行 広田 将司 西田 幸弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.3512-3516, 2009 (Released:2010-05-20)

筆者はラテックスおよび手袋,薬品アレルギー患者となった.手袋のパウダーフリー化およびアレルギープロテクトグローブとしてのポリウレタン手袋内履きの試みを報告する.症例(筆者):1985年外科医として勤務.手の皮膚炎から,ラテックスフルーツ症候群,喘息,全身の小痒疹出現.I型およびIV型アレルギーが重症化し,2004年に離職.パウダーがラテックス抗原暴露の原因となるため院内のラテックス手袋はパウダーフリーとし,合成ゴム手袋で2005年に復職.しかし,IV型アレルギーが再燃したため2008年より添加化学物質のない未滅菌ポリウレタン手袋(デュラクリーン®ライクラ®)を内覆きし,速乾式アルコールを塗り合成ゴム手袋をはめる方法で手術を施行し,アレルギー反応は改善した.結語:1,ラテックス手袋はすべてパウダーフリーにすべきである.2,ポリウレタン手袋を内履きすることはアレルギー対策に有効である.
著者
服部 正嗣 本田 一郎 松下 英信 小林 大介 大河内 治 坪井 賢治
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.2229-2234, 2008 (Released:2009-03-05)
被引用数
3 or 6

症例は22歳,女性.平成18年8月過食による急性胃拡張の診断で入院し保存的治療にて軽快・退院した.10月再び過食後に腹痛・嘔気が出現して当院を受診し急性胃拡張の診断にて入院となった.経鼻胃管挿入にて減圧をはかるも腹痛軽快せず.同日深夜,ショック状態となり挿管呼吸管理,カテコラミン大量投与による循環管理を開始した.CTで腹水とfree air,腹腔穿刺で混濁腹水を認め,緊急手術を施行した.胃は広範に壊死・破裂しており,腹腔内に多量の壊死物質と食物残渣を認めた.脾臓にも壊死を認め,胃全摘術・脾摘出術・腹腔洗浄ドレナージ術を行った.術中もショック状態が続き,術後,DIC・多臓器不全の状態となった.持続血液濾過・血液製剤大量投与などの加療にもかかわらず,術後26時間で死亡した.複雑な家庭環境でのストレスが誘因とされる過食による急性胃拡張が原因で胃壊死・破裂をきたした症例を経験したので報告する.
著者
Mitsuhiro NAKAMURA Hiroki IKEUCHI Hiroki NAKANO Motoi UCHINO Masafumi NODA Hidenori YANAGI Takehira YAMAMURA
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
Nihon Rinsho Geka Gakkai Zasshi (Journal of Japan Surgical Association) (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.1008-1011, 2005-05-25 (Released:2009-01-22)

[目的]潰瘍性大腸炎(以下UC) 手術症例の術前ステロイド総投与量とその副作用について検討した.[方法]1984年8月から2003年12月までに当科で経験したUC手術症例634例のうち術前のステロイド総投与量を算定できた582例を対象とした.[結果]ステロイドのmajor side effectの中で最も多かったのは,骨粗霧症で66%に認められた.骨粗鬆症に対する術後の薬物療法は,術後12カ月で有意な改善を認めたが,正常値には至らなかった.不可逆的な副作用である白内障,大腿骨頭壊死,胸・腰椎圧迫骨折は,ステロイド総投与量が7,000~10,000mgにかけて有意に増加していた.[結論]ステロイド総投与量が7,000mgを越える症例では,不可逆性の副作用の出現に注意し,出現前の手術が望ましいと思われた.また,最も多い副作用である骨粗鬆症の治療には術後1年以上の薬物療法が必要であることが明らかとなった.
著者
二村 浩史 内田 豊義 神森 眞 山田 哲
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.375-379, 2009 (Released:2009-08-05)
被引用数
1 or 0

腺腫様甲状腺腫の穿刺吸引細胞診後にび慢性甲状腺腫大をきたした症例を経験した.その臨床経過と若干の文献的考察をした.患者は38歳,女性.他院にて,結節性甲状腺腫と診断され,その後増大するため当院紹介となった.既往歴,内服歴特になし.患側の左葉を22G注射針にて穿刺吸引細胞診を施行したところ,2~3分後から頸部圧迫感と疼痛を訴えた.エコーにて健側右葉が1cmから4cmに腫脹し,内部血流の増加を認めた.1時間頸部を氷片で冷却するも改善しないため,ステロイドを投与したところ急速に症状は改善した.9日間内服でステロイドを漸減しエコーを行ったところ,腫脹は改善していた.経時的にエコーで経過を追うことができた.術前後にステロイド投与を行ったところ,手術を完墜し合併症なく退院となった.穿刺吸引細胞診で偶然に甲状腺内の神経を刺激したため,血管拡張,血管透過性亢進物質が放出されて,び慢性の腫脹を引き起こしたものと推測された.
著者
熊沢 伊和生 土屋 十次 立花 進 川越 肇 名和 正人 浅野 雅嘉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1426-1431, 2007-06-25 (Released:2008-08-08)

症例は39歳, 男性. うつ病にて治療中. 平成16年11月乾電池を嚥下し腹痛を主訴とし3日後初診. 臍左側部に圧痛, 白血球増多・CRP陽性, 腹部単純撮影で胃内に乾電池の陰影を多数認めた. 乾電池胃内異物の診断で同日開腹術を施行. 電気メスで胃前壁の切開を進めると青白い炎を伴った小さな爆発音を認めた (臓器損傷なし). 粘膜所見は多発潰瘍を伴う腐食性胃炎を認めた. 単三乾電池29個, 単四乾電池2個を回収. 乾電池両極はほぼ融解していた. 術17日目に軽快退院. 本邦での単三乾電池の異食報告例は全て精神疾患患者だった. アルカリ乾電池は消化管内で化学熱傷による粘膜障害と, 化学反応による水素の発生を惹起する. 胃切開時の爆発は消化管閉塞例に多く, 本邦では全て胃内異物例で起きていた. 医療事故防止上結腸切開時と穿孔性腹膜炎での腹膜切開時, そして腸閉塞, 緊急手術, 特に異物摘出での消化管切開は電気メスを使用しないことが推奨される.
著者
Makoto HASEGAWA Nobuaki WADA Takashi INOUE Hiroshi YASUHARA Shuji NAKA Toshihiko KURODA Tohru NOJIRI Hiroki SHINKAWA Takahisa FUJITA Yoshitaka FURUYA
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
Nihon Rinsho Geka Gakkai Zasshi (Journal of Japan Surgical Association) (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.852-857, 2000-04-25 (Released:2009-02-10)
被引用数
5 or 13

1986年5月から1999年6月までの14年1ヵ月間に,当院に来院した経肛門的直腸内異物症9例と,本邦報告例55例について臨床的検討を加えた. 患者年齢は最小年齢15歳から最高年齢43歳で,平均年齢は29.6歳,性別では男性が7人,女性が2人であった.主訴では異物が7人,腹痛が2人で,来院する患者の中には異物挿入の事実を隠している場合もしばしば認められた.原因としては性的行為に関係している症例が8例と最も多かった.そのため患者は羞恥心から夜間当直帯に来院することが多かった.また繰り返し経肛門的直腸内異物で来院する症例も2例認められた.摘出は穿孔性腹膜炎を発生していた1例を除き経肛門的に摘出された.異物の種類ではスプレー缶2例,ハンガー・針金2例,試験管1例,瓶1例,バイブレーター1例,キセル1例,鉛筆1例,お菓子の容器1例となっていた.
著者
吉田 真一 木藤 正樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.3053-3055, 2009 (Released:2010-03-05)
被引用数
1 or 0

胃切除歴のある高齢者で魚骨により肛門周囲膿瘍をきたした症例を経験した.症例は84歳,男性.約1カ月前より肛門部痛があり増強するため初診.腹部CTにて肛門管周囲左側に線状の陰影を認めたため,魚骨迷入・膿瘍と診断し,炎症を局所にとどめ異物除去を検討する目的に入院.肛門周囲の発赤部皮膚を切開したが骨は摘出できず,ドレナージと抗生剤投与を開始した.その後魚骨が後方へ移動し,20日目にようやく魚骨を摘出し治癒した.胃酸度の低下も魚骨による消化管穿孔のおきやすい条件のひとつに挙げられており,特に胃切除後患者では日常生活においても注意を促す必要があると思われた.
著者
Takehiko SAKAI Tomoyuki FUJITA Kei KUSAMA Toshinari KUMAKI Takahisa AOKI Michiya KUDO Yoshio KASUGA
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
Nihon Rinsho Geka Gakkai Zasshi (Journal of Japan Surgical Association) (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.1155-1158, 2000-05-25 (Released:2009-02-10)

1家系, 3世代に, 5例の甲状腺乳頭癌を認めた家系を経験したので報告する.発端者は21歳の大学生であり,その母親が8年前に甲状腺乳頭癌で,他医にて外科治療をされていた.発端者と同時期に, 25歳の実兄が甲状腺乳頭癌にて当科を紹介されて受診したので,家系調査を行った.その結果,母親の妹と,母方の祖母の2人に甲状腺乳頭癌が認められた.発端者の母親は,甲状腺内再発と両側肺転移を認めた. 5人の患者のうち4人に当科で外科治療が施行された.外科治療は甲状腺全摘が望ましいとされているが,合併症を防ぐため,準全摘とした.今後は他の発症していない家族の検診を続けるとともに,手術患者の局所再発,遠隔転移に注意していく必要があると考えられた.
著者
長谷川 毅 妙中 直之 日月 亜紀子 阿古 英次 金原 功 西村 重彦 中塚 伸一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.1247-1251, 2010 (Released:2010-11-25)
被引用数
1 or 0

症例は50歳代,男性.昭和61年に潰瘍性大腸炎(全結腸型)を指摘されていたが放置していた.平成11年に下血にて大腸内視鏡検査を施行,S状結腸癌と診断され同年11月に潰瘍性大腸炎に合併したS状結腸癌として結腸亜全摘術,J型回腸嚢直腸吻合術を施行した(高分化型腺癌,mp,ly2,v1,n0,stageI).平成20年1月に腫瘍マーカーの上昇(CEA,CA19-9)を認めたため大腸内視鏡検査を施行,残存直腸に粘膜不整像を認め,生検にて低分化腺癌と診断された.平成20年3月腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織検査にて直腸内分泌細胞癌と診断された.術後経過は良好で術後第25病日よりmFOLFOX6を開始し,術後10カ月現在,再発の所見は認められていない.直腸内分泌細胞癌はまれな疾患で,1984年以降で自験例が本邦60例目であり,潰瘍性大腸炎の残存直腸に発生したのは本邦初である.
著者
清水 哲也 関戸 仁 松田 悟郎 三宅 謙太郎 土屋 伸広 田 鍾寛
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.1162-1167, 2013 (Released:2013-11-25)

症例は72歳,男性.上行結腸癌S状結腸癌同時多発肝転移左肺転移腹膜播種転移に対し,S状結腸切除術,結腸右半切除術施行した.se,ssn3M1H2P3,stage IVの診断で,術後FOLFOX4 療法を3クール.その後,内服化学療法を施行するもCEA29.5ng/mlとなり,mFOLFOX6 療法を開始した.開始24時間後嘔気,投与終了1時間後意識消失JCS III-300となった.画像検査,腰椎穿刺では異常を認めず,血中アンモニア濃度は339μg/dlで意識障害の原因は高アンモニア血症によるものと診断した.肝不全用アミノ酸輸液,肝不全治療薬使用し,意識消失後21時間で意識状態は改善した.その1カ月後,FOLFOX4 療法を開始した.FOLFOX4 療法再開後は8クール施行したが高アンモニア血症認めることなく施行できた.今回臨床上まれである 5FUによる意識障害を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
Hideyuki UBUKATA Gyou MOTOHASHI Taroh TASAKI Teruhiko KASUGA Motonobu KATANO Takafumi TABUCHI
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
Nihon Rinsho Geka Gakkai Zasshi (Journal of Japan Surgical Association) (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1890-1895, 2003-08-25 (Released:2009-03-31)

症例は63歳,男性. EG領域の2型進行癌にて下部食道切除術施行.再建は細径胃管を作成し,自動吻合器を用いて端側式食道胃管吻合を胸腔内で施行した.術後SIRSの状態となったため,胸腔ドレナージを追加し, CHDF, PMX施行し全身状態の改善に努めた.再開胸は危険な状態であったため,全身状態の小康を待ち術後31日目に検査を行い縫合不全を確認した.術後40日目にUltraflexのcovered stentを内視鏡下に挿入したところ,全身状態の劇的な改善がみられ,その3週間後には瘻孔は完全に閉鎖された.近年の手術手技,手術器具の進歩にも関わらず食道癌の縫合不全発生率は約15%前後との報告が多く難易度の高い術式である.特に胸腔内吻合の場合は頸部吻合に比較し重篤になりやすく治療に難渋する.再開胸できないほど全身状態が悪化している症例の救命には,侵襲の少ないステント治療も有効な一手段であると考えられた.
著者
西川 隆太郎 森本 雄貴 濱口 哲也 浦田 久志 寺邊 政宏 三木 誓雄
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.883-886, 2016 (Released:2016-10-31)

症例は70歳,男性.10日前に,経肛門的に直腸に牛乳ビンを自己挿入したが摘出不能となっていたため,下腹部不快感と残便感を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,直腸内に口側に向かって開口した牛乳ビンの存在が確認された.消化管穿孔の合併はなく,透視下に鉗子・バルーン・スネアによる摘出を試みたが,摘出は不可能であった.そのため,市販の吸盤と紐で即興に作成した吸引器具による摘出を試みたところ,容易に摘出に成功し,手術を回避することができた.今回用いた手技は非常に簡便かつ効果的であり,従来の方法では摘出困難な直腸内異物に対して,特に有効な方法と考えられるものであり,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
Masahiro URAYAMA Takahiro HARA
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
Nihon Rinsho Geka Gakkai Zasshi (Journal of Japan Surgical Association) (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.417-420, 2002-02-25 (Released:2009-01-22)

症例は62歳女性,約52年前急性虫垂炎で手術を受けており,その創部周囲に発赤,疼痛が出現し来院した.血液学的に炎症所見を認め,腹部X線およびCT検査にて糞石様所見があり,虫垂炎が疑われた.虫垂炎の手術既往があったため,抗生物質投与で経過観察したが,翌日,腹部所見が増悪したため,手術を施行した. 52年前の創部は筋層が離開しており,皮下に炎症を伴った虫垂が約2cmほど遺残しており,先端が癒着していた.定型的に虫垂切除を施行した.術後経過は良好であった. 一般に,虫垂切除術の既往があれば,右下腹部痛を示す急性腹症の際に急性虫垂炎は除外され得る.自験例は初回手術時に遺残した虫垂に再度炎症を生じた遺残虫垂炎の症例で,非常に稀な例と考えられた.近年,虫垂炎の診断には超音波が有用とされているが,本症例ではCT検査がより有用であった.
著者
高屋 快 鈴木 龍児 梅邑 明子 鈴木 雄 遠藤 義洋 北村 道彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2725-2728, 2008 (Released:2009-04-07)

症例は76歳,男性.平成18年10月12日17時頃温泉のサウナ内で倒れているところを発見され救急車にて当院搬送された.来院時体温38.2℃,血圧126/70mmHg,脈拍147回/分,意識レベルJCS 300点,全身皮膚にI度熱傷あり.CT,MRIなどで意識障害の原因を検索したが明らかなものは認められなかった.全身管理目的にて当科入院となり2病日には意識レベル回復し経口摂取開始したが,3病日朝より39℃を超える発熱と意識障害(JCS 20~30点)をきたし,採血にてDICと判断し中心静脈カテーテルを留置しメシル酸ガベキサート持続静注を開始した.また肝機能障害も認めた.意識レベル,凝固能・肝機能はともに日数経過とともに改善認め,6病日より経口摂取開始,7病日にメシル酸ガベキサート投与中止し中心静脈カテーテルも抜去した.その後皮膚の所見も軽快し16病日に独歩退院となった.サウナによる熱中症に伴う意識障害の報告は散見されるが,本症は遅発性に意識障害,DIC,肝機能障害をきたしたもので,興味深い病態と考えられた.
著者
小原 啓 青木 貴徳 矢吹 英彦 稲葉 聡 新居 利英 浅井 慶子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.1470-1474, 2008 (Released:2008-12-05)
被引用数
3 or 0

胆管との交通を認めたため肝切除術を施行した感染性肝嚢胞の1例を経験した.患者は82歳,女性.平成14年7月感染性肝嚢胞に対する経皮的ドレナージ術を施行している.平成17年11月発熱,右季肋部痛を主訴に当院救急外来を受診,CT検査で多発肝嚢胞を認め,1カ所がair densityを伴い鏡面像を形成していた.感染性肝嚢胞の再発と診断し入院,同日経皮経肝的ドレナージ術を施行した.症状は軽快したが,造影検査で肝内胆管と嚢胞の交通を認めたため肝切除術を施行,病理診断は単純性嚢胞であった.術後,肝切除断端に膿瘍を形成し経皮的ドレナージを行ったが,その後は問題なく現在外来通院中である.
著者
萩原 千恵 北川 大 堀口 慎一郎 山下 年成 黒井 克昌
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.2130-2135, 2014 (Released:2015-02-28)

乳腺matrix producing carcinoma (以下MPC)の2症例を経験したので報告する.症例1は51歳女性.左乳癌T2N0M0 Stage IIAの診断で乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.病理診断はMPC,pT2,ER(-),PgR(-),HER2(-),sn0/2.術後TC療法を4コース施行し,術後4年5カ月の時点で無再発生存中である.症例2は48歳女性.左乳癌T1N0M0 Stage Iの診断で乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.病理診断はMPC,pT2,ER(-),PgR(-),HER2(-),sn0/4.術後,治験(BEATRICE試験)に参加し,EC療法4コースとBevacizumabを投与したが,術後12カ月で多発肺・骨・肝転移が出現した.その後,weekly paclitaxelを開始したが奏効せず術後1年6カ月で永眠された.