著者
上条 直裕 伊藤 公久 渡邉 妙子
出版者
The Imaging Society of Japan
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.641-649, 2012

近年,歴史的文化財の保護,継承を目的とするデジタルアーカイブ活動が盛んになっている.特に日本刀は個人所有が主であり,歴史的人物,時代背景とのつながりが強いため文化財としての価値は高く,アーカイブによる記録,閲覧の要請は強い.日本刀はその道具としての機能「折れず,曲らず,よく切れる」を達成するための工夫がそのまま美しさを作り出している.これら美しさを示す特徴は観察,理解が難しく,専門家の視点での日本刀の見えを表現できる画像の取得が期待されてきた.日本刀の観察は照明と視線との相対姿勢を調整しながら,微妙な色合い,文様を読み取ることが重要である.我々は,照明角度,視線角度を調整可能とするマルチアングル撮像光学系,正確な色情報を取得するマルチバンド分光撮像系を搭載した日本刀デジタルアーカイブシステムを開発した.また,本システムは色補正,合成,明るさ補正機能を搭載し,専門家のイメージを共有できる画像表示を実現している.本稿では,日本刀の高精細な画像を取得可能とする日本刀デジタルアーカイブシステムの機能,構成とアーカイブ画像における効果を紹介する.