著者
矢部 誠 陳 佳韻 上田 一義 武田 穣
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.18-24, 2020 (Released:2020-07-13)
参考文献数
10

分子シミュレーションや量子化学計算には,対象分子の3次元構造ファイルが必要である.3次元構造ファイルには,構成原子の種類や座標情報,およびそれらの結合に関する情報などが含まれ,論文やweb上のデータベースなど既存のデータソースから取得することができる.これが困難な分子でも,分子モデリングソフトウェアを用いれば3次元構造ファイルを構築することができる.もし,分子模型(実体分子モデル)から3次元構造ファイルを構築できるようになれば,分子模型の構造を初期構造として計算を実行することが可能となり,より多くの高校や大学などの初学者や研究者に対して計算化学的手法の活用が促されると期待される.そこで,市販の分子模型キットで作成した実体分子モデルを計算化学的解析へと導く技術の開発を目指し,要となる 3次元構造ファイル構築ソフトウェアMm2cMLを開発した.このソフトウェアを用いれば,対象とする分子模型の2次元画像データから3次元構造ファイル構築を経て計算化学的解析へと展開することができる.本プログラムはウェブアプリケーションであり,Structure from MotionおよびMulti-View Stereoの手法に,ウェブインターフェースを組み合わせたのが特徴である.ソフトウェアによって構築した3次元構造ファイルを用いて量子化学計算を実行し,その有効性を確認した.