著者
入谷 寛
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Chemical Software (ISSN:09180761)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.65-80, 1999-06-15 (Released:2000-03-28)
参考文献数
4

アルカン分子の中心を定義し,それに結合するアルキル基の組合せの仕方を数え上げることにより,アルカンの構造異性体数の数についての漸化式を求めた。炭素原子数が40までの結果は,グラフ理論によって得られている数値と一致することを確認した。この方法は初等的な組合せ論の積み重ねによるものなので,その演算速度はグラフ理論的方法よりは格段に遅いことがわかった。
著者
奥脇 弘次 土居 英男 望月 祐志
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.102-109, 2018 (Released:2018-06-07)
参考文献数
29
被引用文献数
3 3

近年,用途に応じて目的の機能を有した材料開発の要求が高まっており,大規模な構造予測のためのシミュレーションが注目を浴びている.私達は,今回,散逸粒子動力学(DPD: Dissipative Particle Dynamics)シミュレーションを例に,有効相互作用パラメータ(χパラメータと呼ばれる) をフラグメント分子軌道(FMO)法から算定するためのフレームワークとワークフローシステムを開発した.FMO計算は非経験的であるため,高分子系素材に関わるほとんどの有機化合物に対して使うことが可能であり,χパラメータの算定に対して汎用性を持つと考えられる.この報告では,本システム(FCEWS: FMO-based Chi-parameter Evaluation Workflow System)の開発の目的,理論的な背景,ならびにソフトウェアについて解説する.
著者
清野 淳司 中井 浩巳
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-17, 2014-03-21 (Released:2014-03-21)
参考文献数
63
被引用文献数
3 4

本稿では,大規模な重元素化合物を高効率・高精度に計算するための理論を取り上げる.まず相対論的量子化学の現状を概観し,それを踏まえて目的を遂行するためにどの部分を考察しなければならないのかを述べたい.次にこれらの問題点を解決すべく,著者らが開発した高効率・高精度な2成分相対論計算手法,無限次Douglas-Kroll-Hess変換に基づく局所ユニタリー変換法の理論について解説し,数値検証を行うことで有用性を示す.さらに本手法を分割統治法へと拡張することにより,計算全体の線形スケーリングを達成する手法となることを示す.本手法に基づけば,非相対論と同等の計算コストで (スピン非依存の) 4成分相対論と同程度の精度を与えることができるため,従来の非相対論的なSchrödinger方程式から相対論的なDirac方程式へのパラダイムシフトが可能となる.
著者
青山 智夫 神部 順子 中山 榮子 長嶋 雲兵
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.49-77, 2012-04-28 (Released:2012-05-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

2011年3月12日以降に東京電力福島第1原子力発電所から南,北西方向に拡散した放射性物質の4カ月間にわたる変化を次のようにまとめた.空間線量率,環境資料等を文部科学省,地方自治体等が公表した資料から抽出し,5月15日から7月29日間の福島県,関東各県の主要都市の空間線量率が自然界で本来の物理的半減期と異なる速度で半減することを表す指標(滞留半減期)を計算した.また福島県相馬郡飯舘村八木沢地区の土壌,雑草,陸水の放射線強度の時間変化を示して議論した.さらに東京と福島市の下水汚泥の放射線強度の問題点を示した.これにより放射性物質と大気に関する知見として,放射性物質は浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter, SPM)として移動するが,それは環境省大気汚染物質広域監視システムでは検出しにくいタイプのSPMであること,そして放射性SPM分布には複雑な構造が存在することを示した.またその構造はγ線のエネルギー分布観測で識別できること,加えて放射性SPMの移動には大気境界面が関与していることを示した.さらに沈降した放射性物質と降雨との関連,空間線量率の微細動現象の周期性を示し,同現象と気温の相関を示した.
著者
内橋 貴之
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.20-30, 2018 (Released:2018-03-23)
参考文献数
22

最近の高速原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy: AFM)の進展によって, 生理溶液中でのタンパク質の構造とその時間発展,分子の離散集合などダイナミクスをリアルタイムで可視化できるようになってきた. これまで様々な計測手法による実験事実の積み重ねから推定されてきた事実を動画として提示することで, タンパク質の動的振る舞いを介した機能発現の分子機構を直接的かつ直感的に把握できるようになった. 動画は静止画に比べて極めて多くの情報を与えるが, 一方で, 単に動画鑑賞に終わることなく, そこから有益な情報を客観的な指標を基に抽出すること, すなわち動画解析が次のステップには重要である. 本稿では, これまで高速AFMで観察されてきた代表的なタンパク質の動的現象をi)一分子の構造変化, ii)分子の直進運動と速度解析, iii)二分子間の結合と解離, の3つに大別し, それぞれについて筆者らの実験結果をデータの解釈と解析の効率化のために開発した画像解析法とともに解説する.
著者
青山 智夫 若月 泰孝
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.74-76, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
5

Under nuclear power plant accident, by the ventilation of containment vessel, suspended particulate matter (SPM) is emitted; it attracts radioactive compounds, and the plume diffuses in air. It soaks into the human body. We are required to run away from the invisible plumes. The routes do not exist at any time. We recognize status soon, and should select priority persons to escape from there. We code a real-time plume tracer, which reads 4D-winds of Meso Scale Model (MSM), calculates time-development of plumes. The precision for reach time of plumes is 3–5 min, inner 8 km points from emission.
著者
吉村 季織 高柳 正夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
pp.2014-0001, (Released:2014-05-17)
参考文献数
17

近年,化学データを数学的・統計的手法により解析する「ケモメトリクス」が頻繁に用いられるようになってきた.しかし,日本の大学の化学教育の場ではほとんど取り上げられていない.ケモメトリクスや数値計算の専用ソフトウェアを使うことなく,現在最も普及しているソフトウェアのひとつであるMicrosoft Excel (Excel)の基本機能を用いてケモメトリクス計算を行うことができれば,多くの教育・研究機関で役立つものと思われる.シリーズ6回目は,ケモメトリクスの多変量による定量モデル作成において,最も頻繁に用いられるPLS (partial least squares) 回帰 (PLSR)を取り扱った.これまでと同様に,スペクトルの解析を例に挙げた.モデル構成試料および未知試料のスペクトルの生成,潜在変量を抽出するPLS1 (1化学種の場合) とPLS2 (多化学種の場合) の実行,PLSRによる濃度定量モデル作成を行うワークシートを作成した.生成したスペクトルを使いPLSRとPCRの定量性能について比較を行った.その結果,PLS1によるPLSRでは特定の化学種の濃度データを用いるため,目的とする化学種に関して少ない因子数で良好なモデルが得られた.一方PLS2によるPLSRでは,複数の化学種に対して安定して濃度予測できるモデルが得られることが分かった.少ない因子数においてPLSRがPCRと比較して優位であることは示されたが,最適なモデルが得られるとは限らなかった.モデル化手法と因子数を変えて予測性能を比較しながら最適なモデルを得る必要があることが示唆された.
著者
植村 豪 小寺 厚 津島 将司 河村 雄行 平井 秀一郎
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.222-229, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
8

CO2を用いた原油増進回収(Enhanced Oil Recovery, EOR)は,原油が取り残された油田にCO2を圧入することで原油回収率を高める技術であり,原油の増産と同時に二酸化炭素の隔離が可能な技術として,近年注目されている.EORでは油田中に圧入されたCO2が残存油に溶解することで,粘性低下,体積膨張など,油の物理化学的性状が変化し,原油回収率が高まるとされている.油へのCO2の溶解が原油回収率の向上と密接に関係していると考えられるものの,CO2の溶解に関するメカニズムは未だ解明されていない.このため,本研究では油へのCO2の溶解に関して分子論的な知見を得ることを目的とし,分子動力学シミュレーションを行った.単成分系を仮定した油(シクロヘキサン,C6H12)を用い,CO2が溶解した平衡状態において解析を行い,さらに分子間相互作用の一つであるクーロン相互作用が溶解現象に及ぼす影響についても考察した.その結果,油に対してCO2がクラスター構造を伴って溶解していることを示した.
著者
常田 貴夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
pp.2013-0013, (Released:2014-01-24)
参考文献数
36

理論化学の研究対象において金属表面や金属錯体が主要になりつつある現在,相対論的密度汎関数法(RDFT)の重要性は増している.この方法は,多電子系の電子状態を金属を含む大規模系の反応や物性を定量的に取り扱えるため,大規模金属系の理論研究においてもっともすぐれた理論の1つであることは間違いない.RDFTは量子電気力学にもとづく確かな土台をもつ理論であり,化学における相対論的計算の主要理論となっている.本レビューでは,RDFTの基礎を説明した後,最新の2成分RDFTに至るまでの具体的な道筋を明らかにする.さらには,RDFTが将来的に進むであろう道筋も示すことも目的としている.
著者
末永 正彦
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.25-32, 2005 (Released:2005-03-31)
参考文献数
11
被引用文献数
39 50

Windows環境におけるフリーの分子軌道計算プログラムであるPC GAMESSのための新しい計算化学統合環境の開発を行った。分子モデリングの機能については、市販のモデリングソフトに匹敵するものを実装した。モデルの描画にはOpenGLを用いているため精緻な3Dモデルの作成ができる。GAMESSの入力データの作成および計算の起動はGUIを介して支援され、計算結果の可視化については、最適化構造、分子軌道、静電ポテンシャル・電子密度の等値表面の表示、基準振動のアニメーション表示、赤外・ラマンスペクトルのシミュレーション等を実装している。更に、最適化構造は計算終了後直ちにモデルに反映されるので、GAMESSと連携したモデリングができる。このように、PC GAMESSを中心とした計算化学に必要な種々機能が統合されているため、作業が効率的となる。
著者
望月 祐志 坂倉 耕太 秋永 宜伸 加藤 幸一郎 渡邊 啓正 沖山 佳生 中野 達也 古明地 勇人 奥沢 明 福澤 薫 田中 成典
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.119-122, 2018 (Released:2018-01-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

We have been developing the ABINIT-MP program for the fragment molecular orbital (FMO) method. The list of inter-fragment interaction energies (IFIEs) is available from FMO calculations and is useful in analyzing the nature of interactions in a given target system. In this Letter, we summarize the current status of ABINIT-MP and also the machine-learning assisted analyses of IFIE data.
著者
望月 祐志 中村 昇太 山中 正浩 山田 康之 工藤 光子 常盤 広明 川上 勝 北本 俊二
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.66-67, 2016 (Released:2016-10-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Recently, technologies and applications of 3D-printers have attracted practical interests in the contexts of manufacturing and research developments. In contrast, the educational usages have still been underway. In this Letter, we report a variety of demonstrative 3D-printed molecular models used for education of chemistry and biology in our faculty of Science.
著者
時田 澄男
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.A38-A41, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

水素原子の波動方程式を解くと,無数の原子軌道が導出される.これらのうち,z軸方向に伸びる p, d, および,f軌道をガラスブロック内に実3次元で彫刻し,球殻状節面や円錐面節面の描かれ方を調べた.
著者
末原 茂
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.A25-A32, 2015 (Released:2015-11-26)

PCクラスタ環境を簡単に構築できるオープンソースのLinux OS: Rocks の特徴を紹介し,インストールする際のポイントを,PCクラスタ構築の未経験者の視点から説明する.また,本格的なジョブ管理システムの導入と,簡単なジョブファイルを用いた具体例も示した.
著者
工藤 高裕
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.A3-A5, 2015 (Released:2015-03-30)
参考文献数
7

Here I introduce some examples of molecular structures related to disease therapy. One is oseltamivir which is also given the trade name Tamiflu. The important processes of influenza infection are to ENTER the host cell and to GO OUT from it, and some of the antiviral medicines target these processes. The enzyme neuraminidase clips off a sialic acid from the cell membrane to assist the replicated viruses to go out. Tamiflu is a molecule with a similar structure to it which also binds to neuraminidase, and inhibits the enzyme function (Figure 1). In the case of mutant enzyme (H274Y), Tamiflu binds to it weaker than the wild type, so Tamiflu has less effect than the mutant type. The replaced 274th residue tyrosine is bulkier than the original amino acid histidine and causes orientation change of the amino acid at the active site (Figure 2). Another example is involved in Ebolavirus causing epidemics in West Africa. Although the effective therapeutic medicine and vaccine have not been found yet, the molecular structure of the antibody complex with virus glycoprotein from a human survivor is already deposited to PDB (Figure 3). Now scientists are searching for some effective chemicals and methods using this information.
著者
藤芳 明生 坂本 雅志
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.199-201, 2018 (Released:2019-02-16)
参考文献数
2

This paper proposes a substructure search method for finding an element of a set of chemical structures represented by a SMILES string with regular expression extension. It is known that substructure search is an NP-hard problem in general. However, by taking advantage of a graph-theoretical characterization of chemical compounds, the proposed method runs fast enough. Software for substructure search using the proposed method was implemented and released.