著者
小野 高明 上田 三都子 辻 正康 川本 千代実 山根 伸久
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.148-153, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1

福山市内を流通する乳のアフラトキシンM1 (AFM1)汚染と時期および地域による関連性を知るため,2018年6月~2019年1月にかけて夏期および冬期の各1回調査を行った.また,AFM1汚染の知見が少ない乳飲料について,福山市内を流通する同時期の乳飲料のAFM1汚染度を乳と比較した.結果はすべての乳でAFM1の基準値(0.5 μg/kg)未満となった.時期別の比較では夏期の牛乳1検体がEUの基準値(加熱処理乳:0.050 μg/kg)を超える濃度(0.07 μg/kg)を示したが,AFM1汚染度に有意差はなかった(p>0.05).地域別の比較では,乳のAFM1汚染度について冬期は中国地方のほうがその他地方より有意に高く,夏期は有意に低かった.乳のAFM1汚染は,時期または地域による直接的な関連性があるわけではなく,供与する飼料の種類,量,管理方法による影響を受けると考えられた.乳および乳飲料の比較では,乳飲料のAFM1汚染度のほうが有意に低かった(p<0.01).夏期の乳飲料1検体から最も高濃度(0.08 μg/kg)のAFM1を検出した.乳飲料のAFM1汚染は,原材料の汚染の程度,それらの配合割合および加工による影響を受けると考えられ,製品の無脂乳固形分の増加がAFM1汚染の増加要因となると推定された.