著者
上田 康郎
出版者
茨城県病害虫研究会
雑誌
茨城県病害虫研究会報 (ISSN:03862739)
巻号頁・発行日
no.35, pp.25-28, 1996-04

近年,海外からの安価な農産物および加工品の輸入増加に伴って,国内産サツマイモの主な消費用途であった澱粉,アルコール等の原料・加工用および飼料用の需要が大幅に減少した。これに対応して国内の各サツマイモ産地は,青果用サツマイモを主体とした生産に転換し,産地間の競争が激しくなった。この結果,青果用サツマイモは従来に増して高い品質が求められるようになり病害虫の防除は必須となっている。とくに,ネコブセンチュウは収量・品質に及ぼす被害が大きいので,従来からD-D剤またはクロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤による防除が行われてきた。これらの土壌くん蒸剤は,ネコブセンチュウに対して優れた防除効果を示すが,処理時の地温や土壌水分等の土壌条件や気象条件によって効果が左右される。最近では,一段と安定した高い防除効果を得るために土壌くん蒸剤の施用量を増したり,または両薬剤を併用する傾向にある。ネコブセンチュウの防除効果を一段と高める手段として,安易なくん蒸剤の増量またはくん蒸剤相互の併用は,防除効果の点から得策と考えられず,さらに,危被害の発生および環境への影響についても考慮することが必要である。これらのことから,今回ネコブセンチュウに対する薬剤の体系防除法について試験を行ったので結果の概要を報告する。