著者
上田 淳二 筒井 忠
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.248-266, 2013 (Released:2021-10-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日本の消費税について,毎年度の税収対GDP比やVRR(VAT Revenue Ratio)の値をみると,必ずしも一定で推移しているわけではなく,GDPに対する税収弾性値も変動している。本稿では,消費税収の対GDP比が変動してきた要因を明らかにし,将来の消費税収の対GDP比の大きさを考える際に考慮しなければならない要因を検討する。そのために,産業連関表を用いて,非課税取引を考慮した需要項目別の課税ベースの大きさを考えたうえで,毎年度の「理論的税収」の値を計算することによって,GDPに対する民間消費や住宅投資,一般政府総固定資本形成の比率の変化が,消費税収の変動に大きな影響を与えてきたことを示す。さらに,理論的税収と徴収ベースの消費税収の差として,「税制要因」による税収変動の大きさを把握し,2003年度の税制改正における中小事業者への特例措置の変更によって,税制要因の規模が大きく縮小したことを示す。
著者
上田 淳二 片野 幹
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.133-151, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
15

日本の消費税について,課税ベースの大きさを正確に計測するためには,産業連関表のデータに基づいて,部門ごとの付加価値の産出・使用額に対応した消費税額や,家計消費・非課税部門の中間消費など需要項目に対応した消費税額を適切に推計する必要がある。しかし,総務省政策統括官室(2013)などのこれまでの研究では,産業連関表から推計される消費税の課税ベースの大きさは,実際の消費税収から想定される課税ベースを大きく上回ることが指摘されてきた。本稿では,部門別・需要項目別の消費税課税ベースの大きさを整合的に推計するために,Hutton(2017)で示されている手法を用いて,部門・商品に関して実際の税制を踏まえた推計手法を整理した上で,2011年と2015年の産業連関表から得られるデータを用いた推計結果を示し,推計される消費税の課税ベースが,実際の税収値から想定される課税ベースを大きく上回ることはないことを明らかにした。