著者
上西 浩司
出版者
鳥羽商船高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

【研究目的】本研究では、日本の大学における教務担当職員の新たな役割の実際を調査・分析し、当該役割の一般化を試みる。【研究方法】2007年の上西・中井・齋藤の調査からは、教務担当職員の継続従事年数が長いか、関連部門内を異動する機関・組織において「ゼネラリスト志向」ではなく専門性についての萌芽があると仮定できた。このため、当該機関・組織の教務事務責任者に対して業務内容、知識・技能等にっいて、教員との役割分担を視野にいれたインタビューを実施する。【研究成果】教務担当職員の継続従事年数が長いか、関連部門内を異動する機関・組織の教務事務責任者からは、1)大学教育改革にはベテランの教務担当職員が必要である、2)ベテランの教務担当職員とは、卒業要件等照合、関係法令確認、教務データ管理、講義室等施設・設備管理等の業務に熟知していて、それを卒なくこなし、後輩に指導ができる人である、3)教務担当課長に教務経験のない者がなるのは関連知識・スキルがないためむずかしく、なった場合、本人が大変苦労し、大学にとっても研修コストや業務低下等のリスクが増すと指摘された。このことからは、当該教務事務責任者は大学職員の「専門」の一分野として教務事務をとらえているということができる。つまり、教務担当職員が従来行ってきた教員支援業務としての教務事務について、大学職員の「専門」の一分野として捉えなおし、教職協働における教務担当職員の"新たな"役割と位置づけることができるのではなかろうか。今後は、「専門」としての教務事務の確立のため、体系的に編まれた教務事務の標準テキストの作成が必要となるう。
著者
上西 浩司
出版者
国立大学法人奈良教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

【研究目的】教務担当職員のキャリア・パスに関して各大学の人事政策を調査・分析し、当該職員の能力開発において組織的な取り組みの一つである人事政策が果たす役割や課題を考察する。【研究方法】2012年12月から2013年1月にかけて全国の国公私立大学(短期大学、大学院大学を除く)746校の人事担当責任者に対して、キャリア・パスの人事政策上の位置づけを調査するため、人事異動の状況、昇任基準、研修など職員の育成策、教務担当職員の業務範囲及び職能基準など人事に関する状況について郵送によりアンケート調査した(回答数165校、回答率22.1%)。【研究成果】調査結果から人事政策の現況について次のことが指摘できる。1)事務職員が業務処理能力を高めたいと志向する動因としてキャリア・パスの明示をとらえた場合、キャリア・パスとともに人事異動の方針や管理職への登用基準・条件等をあわせて示す必要があると考えられるが、今回の調査では当該条件にあてはまる大学はほとんどなかった。2)事務職員の人事異動はほとんどの大学で肯定的に実施されていて、人事担当責任者の"ジェネラリスト志向"を具現化したものととらえられた。3)事務職員の自己研鐙に対しては、ある程度の支援をしている大学が一定数あったが、自己研鑽と人事・給与面の処遇を直接的に結びつけている大学はほとんどなかった。また、事務職員の育成に関連した大学院へ派遣している大学は少数であった。当初の問題意識は、教務担当職員の能力開発に関する大学の人事政策が果たす役割を考えることであったが、今回の調査からは教務担当職員の専門性を意識した人事政策というものを見出せなかった。"ジェネラリスト志向"の中でどのように教務担当職員の専門性の向上をはかっていくかは、今後の人事政策における課題と思われる。